逆日歩(ぎゃくひぶ)とは、株式の信用取引において「空売り」ポジションが多くなり、貸し株の需要が供給を上回る際に発生する追加のコストです。
これは、貸し株料として証券会社に支払う通常の金利に加えて発生し、空売りを行う投資家にとっての負担となります。
この記事では、逆日歩の仕組み、計算方法、リスク回避のポイントを詳しく解説します。
逆日歩とは?
逆日歩とは、株を「信用売り(空売り)」するときに、追加でかかるお金のことを指します。
空売りとは、まだ持っていない株を証券会社から借りて売る方法です。「あとで安く買い戻せば、差額が利益になる」という考えで行われます。
でも、株を貸してくれる量には限りがあります。
売りたい人が多くて、借りたい株が足りなくなると、証券金融会社(たとえば日本証券金融)が、足りない分を集めようとします。
そのとき、株を借りた人に対して「追加のお金を払ってください」と言われることがあります。
これが逆日歩です。正式には「品貸料」とも呼ばれ、借りる側にとっては負担となります。
この逆日歩は、売る人が多すぎて株が足りなくなったときにだけ発生します。つまり、「空売りが人気すぎる」と起きる、特別なコストです。
逆日歩が発生する仕組み
1. 空売りが増えると株が足りなくなる
手元に株がなくても「借りて売る」ことができます。これを「空売り」と呼びます。
しかし、同じ株を空売りする人が多くなると、証券会社が貸すための株が足りなくなることがあります。
特に、値上がりして注目されている株や、もともと取引が少ない株では、このようなことが起こりやすいです。
2. 株を貸す人が足りないと、追加の費用が発生する
株を借りるときは、証券会社が「証券金融会社」というところから株を借ります。
でも、空売りしたい人が多くて、貸せる株が足りないと、証券金融会社は追加で株を集めなければなりません。
このときに発生する特別な費用が「品貸料(しながしりょう)」です。
この費用が発生すると、空売りをした人がそれを払うことになります。
3. 空売りをした人のコストが増える
この「品貸料」のことを、私たちは「逆日歩(ぎゃくひぶ)」と呼びます。
逆日歩は、空売りをした人が1日ごとに払う仕組みです。
そのため、長く空売りの状態を続けると、毎日のように費用がかかってしまい、せっかくの利益が減ってしまうおそれがあります。
4. 具体例
例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
・1株あたりの逆日歩が「5円」
・1,000株を空売りして「3日間」持ち続けた場合
このときに発生する費用は、
「5円 × 1,000株 × 3日間 = 15,000円」です。
つまり、知らずに空売りを続けていると、いつの間にか1万5,000円もの費用を払うことになってしまうのです。
逆日歩の計算方法
逆日歩の金額は証券金融会社によって日々決定され、1株あたりの品貸料として公表されます。
ここでは、逆日歩がどのように計算されるのかをご説明いたします。
1. 逆日歩の計算式
逆日歩の金額は、以下のように計算します。
例えば、
・1株あたりの逆日歩が「10円」
・空売りした株の数が「1,000株」
・その株を持っていた日数が「5日間」
このときの逆日歩の合計は、
「10円 × 1,000株 × 5日間 = 50,000円」になります。
つまり、5万円の費用がかかるということです。
利益が出ていても、逆日歩によって思ったより少なくなってしまうこともあります。
2. 注意しておきたいこと
逆日歩には、次のような特徴があります。
・日によって金額が変わるため、あらかじめ正確な費用を知ることはできません。
・空売りで株価が下がっても、逆日歩が高ければ利益が減ってしまう場合があります。
・取引量が少ない銘柄や、人気のある株は逆日歩が発生しやすい傾向にあります。
特に、株主優待の前後などは空売りが集中するため、逆日歩が高くなりがちです。事前に「貸借銘柄」の状況や、過去の逆日歩の動きを確認しておくと安心です。
逆日歩の影響について
1. 信用売りをしている人への影響
逆日歩が発生すると、せっかく株価が下がっても、利益が少なくなってしまいます。場合によっては、逆日歩のせいで利益どころか、損をしてしまうこともあるので注意が必要です。
<例>株価が下がってもうれしくないケース
・想定利益:株価1000円 → 900円に下落(100円の利益)
・逆日歩負担:10円 × 1,000株 × 5日 = 50,000円のコスト
・結果:利益10万円 - 逆日歩5万円 = 利益減少
2. 株価への影響
逆日歩が何日も続くと、空売りをしている人の負担がどんどん大きくなります。そのままでは損がふくらむため、あきらめて株を買い戻す人も出てきます。
これを「踏み上げ」といって、売っていた人たちが一気に買いに回ることで、株価が急に上がることがあります。
とくに、信用売りの人が多い銘柄では、このような動きが起きやすくなります。
逆日歩のリスクを回避する方法
1. 銘柄の貸借状況をチェックする
貸借倍率とは、信用買いと信用売りのバランスを見る数字です。
・貸借倍率が1未満 → 売っている人が多く、逆日歩が出やすい
・貸借倍率が1以上 → 売っている人が少なく、逆日歩は出にくい
たとえば、貸借倍率が0.3など、とても低い場合は、逆日歩が発生する可能性が高いので注意しましょう。
2. 権利付き最終日に気をつける
配当金や株主優待がもらえる「権利確定日」の前になると、それを目的にした信用売りが増えます。これを「つなぎ売り」と言いますが、売りが増えると逆日歩も発生しやすくなります。
とくに、人気のある優待銘柄では、逆日歩がとても高くなることがあるので要注意です。
3. 一般信用売りを使う
もし対応している証券会社を使っていれば、「一般信用取引」という方法もあります。この方法では、逆日歩が発生しません。
とくに「無期限」の一般信用売りなら、期限を気にせず使えるので安心です。
ただし、どの銘柄でも使えるわけではなく、銘柄の数や在庫に限りがあります。人気のある株だと、在庫切れで売れないこともあるので、事前に確認が必要です。
逆日歩のよくある質問
Q1. 過去の逆日歩はどこで確認できますか?
過去の逆日歩は、日本証券金融のホームページや、証券会社のサイトで調べることができます。また、「貸借データ」をまとめているウェブサイトでも確認できますので、気になる方はチェックしてみてください。
Q2. いつ発表されますか?
逆日歩は、その日の翌営業日(次の平日)に発表されます。
だいたい午後3時ごろ、日本証券金融などのサイトに掲載されます。証券会社の取引画面でも見ることができますので、ご自身の環境で確認してみましょう。
Q3. 金額はどうやって決まりますか?
逆日歩の金額は、以下のような条件で決まります。
- 品貸料率:証券金融会社が毎日決めています。売りたい人が多いほど、この料率は上がる傾向があります。
- 信用売りの残りの量(建玉数):売りポジションが多いと、逆日歩がつきやすくなります。
- 貸せる株の量と需要のバランス:貸す株が少なく、売りたい人が多いと、逆日歩が発生しやすくなります。
逆日歩は「1株あたり○円」として発表され、それに自分の株数をかけた金額が、実際にかかる費用になります。
Q4. 上限がありますか?
はい、あります。
1日に発生する逆日歩には上限が決まっています。これはルールとして決められており、制度信用取引を利用する際の安心材料にもなります。
ただし、権利付き最終日などには、数日分の逆日歩がまとめてかかることがありますので、注意が必要です。
Q5. 高くなりやすいのはどんなときですか?
以下のような場合に、逆日歩が高くなることがあります。
・株主優待の権利付き最終日:優待をもらうための「クロス取引」が集中するため。
・出回っている株が少ない銘柄:いわゆる「低位株」や、小さな会社の株など。
・信用売りがとても多い銘柄:買いたい人よりも売りたい人が極端に多いとき。
・規制がかかっている銘柄:信用売りが制限されている場合など。
とくに、優待クロスを行うときは、過去の逆日歩の傾向や貸借倍率(売りと買いのバランス)を事前に確認しておくと安心です。
Q6. つかないこともありますか?
はい、逆日歩が発生しない場合もあります。
貸せる株が十分にあるとき:売りと買いのバランスが取れていると、逆日歩はつきません。
一般信用取引を使ったとき:この場合は証券会社が用意した株を借りる仕組みなので、制度信用取引の逆日歩は発生しません。ただし、「貸株料」という費用がかかることがあります。
Q7. 確定申告で経費にできますか?
はい、できます。
逆日歩は「株を売るときにかかった費用」として、確定申告で経費に入れることができます。申告する際は、証券会社が出している年間取引報告書を見ながら、正しく申告しましょう。
まとめ
空売りはうまくいけば利益になりますが、この逆日歩が大きな負担になることもあります。そのため、売買をするときは、逆日歩も含めたコストをしっかり考えることが大切です。
また、できるだけムダな費用を避けるには、信用取引のルールや仕組みをよく知っておくことが必要です。
投資で成功するためには、情報収集とリスク管理が欠かせません。こまめにチェックしながら、落ち着いて判断していきましょう。