企業の健康状態をあらわす数字のひとつに「自己資本比率」というものがあります。これは、簡単に言えば「どれだけ自分のお金でやりくりしているか」を見る指標です。
例えば、お小遣いで買い物をするのと、お金を借りて買い物をするのとでは、安心感がちがいますよね。会社も同じで、自分のお金が多いほど、ピンチのときにも耐えやすくなるんです。
この記事では、自己資本比率について、一般的な目安や3つの企業の実例を使って解説します。
自己資本比率とは?
自己資本比率とは、会社の持っているすべての資産のうち、どれくらいが「自分のお金(=株主のお金)」でまかなわれているかを示す数字です。
たとえば、会社が1億円の資産を持っていて、そのうち5,000万円が自己資本なら、自己資本比率は50%になります。
分かりやすく言うと、「会社の持ち物のうち、どのくらいが借り物ではなく、自分のものか」を見る指標です。
※決算短信の貸借対照表で、自己資本(株主資本)と負債の内訳を確認することができます。Yahoo!ファイナンスやバフェット・コードなどの金融サイトでも簡単にチェック可能です。
自己資本比率の計算方法
自己資本比率は以下の式で算出されます。
・自己資本(株主資本):10億円
・負債(借入金等):15億円
・総資本=10億円+15億円=25億円
この場合、
となり、自己資本比率は40%となります。
自己資本比率の大切さについて
会社の「体力」や「信頼度」を測るうえで、自己資本比率はとても重要な指標です。
ここでは、その理由を4つに分けてご説明いたします。
1. 財務が安定しているかが分かる
自己資本比率が高い会社は、借金に頼らず、自分のお金でしっかりと運営できている状態です。
そのため、景気が悪くなったときや市場が大きく変わったときでも、落ち着いて対応できる力があります。
たとえば、大きな不景気が来ても、自己資本がしっかりある会社は返済に追われることが少ないため、事業を止めずにすむことが多いです。

2. 信用されやすくなる
自己資本比率が高いと、「この会社はしっかり経営しているな」とまわりから評価されます。銀行からお金を借りるときにも、いい条件で貸してもらいやすくなります。
また、取引先との信頼関係にも良い影響を与えます。
信用のある会社は、支払いの条件や仕入れの値段など、取引で有利になりやすく、ほかの会社よりも競争力を持つことができるのです。
反対に、自己資本比率が低いと借金に頼っているとみなされ、利息の負担が増えたり、信用を得にくくなったりするおそれがあります。
3. 倒産のリスクが小さくなる
借金が少なく、自分のお金で運営できている会社は、急な出費や売上の減少があっても、すぐに経営が苦しくなることは少ないです。
たとえば、機械が壊れて新しい設備が必要になったり、急に仕入れ価格が上がったりしても、自己資本に余裕があれば落ち着いて対処できます。

4. 将来の成長にチャレンジできる
自己資本がしっかりある会社は、新しいことにも安心して挑戦できます。
たとえば、新しい商品やサービスを作るための研究開発、海外への進出、新しいお店や工場を建てるなど、将来の成長につながる取り組みにお金を使いやすくなります。
自分のお金でこれらを進められるということは、ほかの会社よりも早く動けるということでもあり、競争の中で一歩先に進むチャンスにもなります
自己資本比率の目安
自己資本比率がどれくらいが良いかは、業種や会社の大きさによって変わります。ただし、おおまかな目安としては、次のように考えられています。
- 40%以上:非常に健全。安定した財務基盤を持ち、リスクに強い。
- 20%〜40%:普通〜やや健全。特に問題はないが、業界によっては改善の余地あり。
- 20%未満:リスクが高い。借入金への依存度が高く、財務状況の改善が必要。
1. 40%以上:非常に健全
自己資本比率が40%以上ある会社は、自己資本でしっかり経営できていると考えられます。
借金に頼らずに会社を動かせるため、急なトラブルにも強く、安心して見守れる存在です。

2. 20%〜40%:普通〜やや健全
このくらいの比率の会社は、ある程度の自己資本を持ちながら、必要に応じて借金も使っているバランス型です。
特に問題はありませんが、業種によっては自己資本を増やした方が良い場合もあります。

3. 20%未満:リスクが高い
自己資本比率が20%を下回ると、財務面での不安が大きくなります。
外から借りたお金に頼っている状態なので、もし景気が悪くなったり、金利が上がったりすると、会社の経営に大きな影響が出るかもしれません。

4. 自己資本比率の業界差
業種によっては、自己資本比率の標準的な数値が異なることもあります。
例えば、工場をたくさん持つ製造業や、土地や建物を多く持つ不動産業では、大きなお金を最初にかける必要があるため、比率が低くてもすぐに問題になるわけではありません。
反対に、サービス業やITの会社のように、あまりお金を使わなくても仕事ができる業種では、自己資本比率は高い方がのぞましいです。
自己資本比率の実例
自己資本比率の異なる3つの企業の例を挙げて、その財務状態を説明します。
1. 自己資本比率が高い企業:A社
- 総資産:100億円
- 自己資本:70億円
- 自己資本比率:70%
A社は、自己資本が多く、借金にあまり頼らずに会社を運営しています。
たとえば、急に景気が悪くなっても、あわてずに対応できる体力があります。このような会社は長い目で見て安心できるため、投資先としても人気があります。
2. 自己資本比率が中程度の企業:B社
- 総資産:100億円
- 自己資本:40億円
- 自己資本比率:40%
B社は、ほどよく自分のお金と借金を使い分けています。
借りたお金を使って、あたらしい事業にチャレンジすることもできるので、成長のチャンスもあります。今後の伸びしろに期待したい会社です。
3. 自己資本比率が低い企業:C社
- 総資産:100億円
- 自己資本:10億円
- 自己資本比率:10%
C社は、ほとんどのお金を外から借りて会社を運営しています。
そのため、景気が悪くなったり、借りているお金の利息(借り賃)が上がったりすると、大きな影響を受けやすくなります。
もしも売上が減ったときには、借金を返せなくなる心配もあるので、早めの対策が必要です。
自己資本比率に関するよくある質問
Q1. 高いとどんな良いことがあるのですか?
自己資本比率が高い会社は、自分のお金でしっかりと経営できているといえます。そのため、景気が悪くなっても借金の返済で困ることが少なく、倒産の心配が減ります。
さらに、銀行や取引先からの信頼も高まり、お金を借りるときも有利な条件になりやすいです。
Q2. 低いと投資する人にどんな影響がありますか?
自己資本比率が低い会社は、借金に頼って経営している状態です。
景気が悪くなったときや金利が上がったときに、返済の負担が重くなり、利益が減るおそれがあります。その結果、株価が不安定になりやすく、長く投資を続けるにはリスクが高まる可能性があります。
Q3. 業種によって自己資本比率は違うのですか?
はい、業界によって理想の比率は変わります。
たとえば、工場をたくさん建てたり、土地を買ったりする必要がある製造業や不動産業では、自己資本比率がやや低めでもあまり問題視されないことがあります。
反対に、少ない設備で事業ができるIT業界やサービス業では、自己資本比率が高い方がよいとされる傾向があります。業界の特性をふまえて判断することが大切です。
Q4. 自己資本比率と株価には関係があるのですか?
自己資本比率が高い会社は、財務が安定していると見なされることが多いため、株価も落ち着いて動く傾向があります。
安心して投資できる会社として、投資家からの注目も集まりやすくなります。
ただし、株価はさまざまな要因で変動しますので、自己資本比率だけでなく、売上や利益の動きもあわせて確認することが大切です。
まとめ
自己資本比率は、会社の「元気さ」や「安心感」を知るための大事な数字です。
高い自己資本比率を保っている会社は、経済の変化にも強く、倒産の心配が少ないうえに、信頼されやすくなります。そして、将来の成長にも積極的に取り組むことができます。
投資を考えるときは、決算書や会社情報をまとめたウェブサイトなどで自己資本比率をチェックして、会社の土台がしっかりしているかを見極めるようにしましょう。