決算発表は、株価が大きく動くチャンスである一方、思わぬ損失を招きやすい危険なタイミングでもあります。
「決算が良さそうだから」「業績が伸びているから」といった理由だけで決算を跨ぎ、結果的に大きく負けてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。
実は、プロ投資家は決算の数字そのものよりも、市場の期待や株価の反応を重視し、明確なルールを持って決算またぎに臨んでいます。
この記事では、初心者でも実践できる決算またぎで失敗しないための5つのルールを、具体例を交えながら分かりやすく解説します。
決算またぎとは?初心者が知っておくべき基本知識

決算またぎとは、決算発表をまたいで株を保有し続けることを指します。
具体的には、決算発表前に株を買い、そのまま決算発表後まで持ち越す投資行動のことです。
多くの企業は四半期ごと(3か月に1回)に決算を発表しますが、そのタイミングでは株価が大きく動きやすくなります。
その値動きを狙って利益を得ようとするのが、決算またぎです。
1. なぜ決算発表は株価が大きく動くのか
決算発表では、以下のような重要情報が一気に公開されます。
- 売上・利益などの実績数字
- 市場予想(コンセンサス)との差
- 今後の業績見通し(通期予想・来期見通し)
これらは株価に直結する情報のため、発表直後に買いや売りが一斉に入ることで、大きな値動きが起こりやすくなります。
とくに、発表が「引け後」に行われる場合、翌日の寄り付きでギャップアップ(大幅上昇)や
ギャップダウン(大幅下落)が発生することも珍しくありません。
2. 決算またぎが「危険」と言われる理由
決算またぎは、短期間で大きな利益を狙える一方、初心者にとってはリスクも高い手法です。
主な理由は次の3つです。
① 思惑と逆に動くことが多い
決算が良くても株価が下がる、悪くても上がるといったことはよくあります。
② 損切りがしづらい
決算後に大きく下落すると、寄り付きから一気に下がるため、
想定していた損切りラインで売れないことがあります。
③ 感情に左右されやすい
決算前は期待、決算後は恐怖や後悔が出やすく、冷静な判断が難しくなります。
決算またぎで失敗しないプロ投資家が実践する5つのルール

決算発表は株価が大きく動きやすく利益を狙える反面、思わぬ損失につながることもあります。
プロ投資家は、決算の数字だけで判断せず、事前準備と決算後の反応を重視しています。
ここでは、決算またぎで失敗しにくくなる5つの基本ルールを解説します。
1. 決算前に上方修正が出ていないかを確認する
決算前の上方修正は、すでに株価に織り込まれている可能性があります。
決算前に業績の上方修正が発表されている場合、その好材料はすでに市場に知られており、決算が予想通りでも「材料出尽くし」で株価が下がることがあります。
たとえば、「売上が過去最高」「利益が大幅増」と発表されても、投資家が事前にそれを予想していれば、決算後に売られてしまうケースは珍しくありません。
チェックポイント
- 上方修正の有無は適時開示情報で確認
- 修正発表日とその後の株価の動きをセットで見る
- 数字だけでなく「一時的な要因ではないか」も見極める
👉 「良い決算=株価が上がる」とは限らない点に注意が必要です。
上方修正は、株探(かぶたん)でチェックするのがおすすめです。
2. 決算通過後の値動きを過去チャートで確認しておく
その企業の決算後のクセを事前に知っておくことが重要です。
株価の反応には企業ごとの特徴があります。良い決算でも売られやすい会社もあれば、多少悪くても下がりにくい会社もあります。
具体例
A社:決算が良くても毎回売られやすい
B社:決算が多少悪くても下げ止まりやすい
行動ポイント
- 過去3回分以上の決算翌日のチャートを確認
- 決算発表が「引け後」か「場中」かをチェック
- ギャップアップ・ダウン後の戻りやすさにも注目
👉 決算内容よりも「市場がどう反応したか」がヒントになります。
チャートツールは、TradingView(トレーディングビュー)がおすすめです。
3. コンセンサス(市場予想)とのズレに注目する
市場予想を上回ったかどうかが、株価を左右します。
株価は「過去の実績」ではなく「市場の期待」に反応します。前年より増益でも、予想を下回れば失望売りされることがあります。
具体例
利益100億円でも、予想が120億円 → 株価は下落しやすい
予想90億円に対して100億円 → 株価は上昇しやすい
行動ポイント
- コンセンサスは証券会社レポートや株アプリで確認
- EPS・売上・利益の3点をチェック
- 数字だけでなく成長率や改善ペースにも注目
4. 決算後の通期見通しの数字を必ず確認する
株価は「これからの数字」に最も敏感です。
決算はあくまで過去の結果。それ以上に重要なのが、会社が示す通期見通しや来期予想です。
具体例
決算自体は好調でも、
・通期予想が据え置き
・来期の成長が鈍化
といった場合、「ピークアウト」と判断され売られることがあります。
行動ポイント
- 通期の売上・利益を前年と比較
- 進捗率が高すぎる場合は出尽くし感に注意
- 社長コメント・IR資料のトーンも確認
👉 数字だけでなく、会社の「姿勢」も株価に影響します。
決算に関しては、決算短信とは?でご覧ください。
5. 決算後にどう動くかシナリオを3つ用意しておく
上がる・下がる・動かない、3パターンを想定しておきましょう。
どんなに自信のある決算でも、実際の株価は予想と違う動きをすることがあります。
具体例
上がったら:一部利確
下がったら:事前に決めたラインで損切り
動かなければ:無理に動かず様子見
行動ポイント
- 「〇〇円まで上がったら売る」と事前に決める
- 想定外の下落でも感情で判断しない
- 決算の数字より市場の反応を重視する
決算またぎで負ける人に共通するパターン

決算またぎで損をしてしまう人には、いくつか共通した行動パターンがあります。
ここでは、実際によく見られる失敗例を紹介します。
もし当てはまるものがあれば、決算またぎを見直すきっかけにしてください。
1. 決算の数字だけを見て判断している
最も多い失敗が、決算の数字だけで売買を決めてしまうことです。
「増収増益だから上がるはず」
「過去最高益だから大丈夫」
こう考えてしまいがちですが、株価は数字そのものよりも市場の期待とのズレに反応します。
すでに好決算が織り込まれていれば、数字が良くても「材料出尽くし」で売られることは珍しくありません。
2. 決算前に株価が大きく上がっている銘柄を跨ぐ
決算前に株価が急騰している銘柄は、期待がかなり先行している状態です。
この状態で決算を跨ぐと、
- 予想通り → 利確売り
- 少しでも未達 → 急落
という、負けやすい状況になりやすくなります。
「もう少し上がるかも」という期待で持ち越すほど、リスクは高まっていきます。
3. 上方修正=安全だと思い込んでいる
「上方修正が出ているから大丈夫」
と考える人も多いですが、これは危険な思い込みです。
上方修正が出た時点で、その情報はすでに市場に知られています。
決算でその内容を再確認するだけなら、株価は動かない、もしくは下がることもあります。
上方修正はゴールではなく通過点と考える必要があります。
4. 決算後の下落を想定していない
負ける人ほど、「上がったらどうするか」しか考えていません。
しかし、決算またぎでは下がった場合の対応を決めていないことが致命傷になります。
- どこまで下がったら損切りするのか
- ギャップダウンしたらどうするのか
これを決めていないと、決算後に身動きが取れなくなります。
5. 「今回はいける」という感覚で跨いでいる
決算またぎで負けやすい人は、最終的に感覚や雰囲気で判断しています。
- SNSで盛り上がっている
- 掲示板の期待感が強い
- なんとなく良さそう
こうした要素は、すでに株価に織り込まれている可能性が高いです。
プロ投資家ほど、「自分の直感」を疑い、数字・過去データ・市場反応を重視します。
6. 決算後もズルズル持ち続けてしまう
決算後に下がっても、
「そのうち戻るだろう」
「ここで売るのはもったいない」
と考えてしまい、損失を確定できないケースも多く見られます。しかし、決算後の下落はトレンド転換のサインであることも少なくありません。
決算を跨ぐなら、決算後の判断基準まで含めて戦略です。
7. 決算またぎで負ける人の共通点まとめ
負ける人には、次の共通点があります。
- 決算の数字だけで判断する
- 期待が高まりすぎた銘柄を跨ぐ
- 下がった時のシナリオを考えていない
- 感覚や雰囲気でポジションを持つ
決算またぎは、「当てにいく投資」ではありません。
負けないための準備ができているかどうかが結果を分けます。
決算またぎ前のチェックリスト

決算またぎで失敗する多くの原因は、「なんとなく跨いでしまうこと」にあります。
決算前に、以下のチェック項目を一つずつ確認してください。
すべてに納得できて、初めて決算またぎを検討すべきです。
チェック① 決算前に株価は上がりすぎていないか
決算前に株価が大きく上昇している場合、好決算への期待がすでに織り込まれている可能性があります。
確認ポイント
- 直近1〜2か月で急騰していないか
- 高値圏で出来高が増えていないか
- ニュースやSNSで過度に注目されていないか
👉 上がりきった後の決算またぎは、リスクが高くなります。
チェック② 上方修正・材料は出尽くしていないか
決算前に上方修正や好材料が出ている場合、その情報はすでに市場に反映されている可能性があります。
確認ポイント
- 最近、業績修正が発表されていないか
- 修正発表後、株価はどう動いたか
- 一時的な要因(為替・特需)ではないか
👉 「上方修正がある=安全」とは限りません。
チェック③ コンセンサス(市場予想)を把握しているか
決算で重要なのは、実績が良いかどうかではなく、予想を上回るかどうかです。
確認ポイント
- 売上・利益・EPSの市場予想を把握しているか
- ハードルが高すぎないか
- 会社予想と市場予想にズレはないか
👉 予想のハードルが高いほど、決算後は荒れやすくなります。
チェック④ 過去の決算後の値動きを確認したか
企業ごとに、決算後の株価の動きには「クセ」があります。
確認ポイント
- 過去3回以上の決算翌日のチャートを見たか
- 良い決算でも売られる傾向はないか
- ギャップアップ・ダウン後の動きはどうか
👉 過去の反応は、将来のヒントになります。
チェック⑤ 通期見通し・来期予想を重視しているか
決算は過去の結果であり、株価はこれからの見通しに反応します。
確認ポイント
- 通期予想は上方修正されそうか
- 進捗率が高すぎないか
- 来期の成長イメージが描けるか
👉 「今がピーク」と思われる決算は売られやすいです。
チェック⑥ 決算後の行動ルールを決めているか
決算またぎでは、決算後にどう動くかを決めていないことが最大のリスクです。
確認ポイント
- 上がった場合の利確ライン
- 下がった場合の損切りライン
- 動かなかった場合の対応
👉 事前に決めておけば、感情に振り回されません。
チェック⑦ 最悪のケースを受け入れられるか
決算は、どれだけ準備しても想定外が起こるイベントです。
確認ポイント
- ギャップダウンしても精神的に耐えられるか
- その損失は資金管理上、問題ないか
- 「外れてもいい」と割り切れているか
👉 迷いがあるなら、跨がない判断も立派な戦略です。
決算またぎ前チェックリストまとめ
以下の質問に、すべて「はい」と答えられますか?
- 株価は過熱していない
- 期待と現実の差を理解している
- 過去の決算後の動きを把握している
- 決算後の行動プランが明確
一つでも不安があるなら、決算またぎを見送る判断も正解です。
まとめ | 決算またぎは「当てる投資」ではない
決算またぎで結果を分けるのは、「決算を当てられるか」ではありません。
上方修正の有無、市場予想とのズレ、過去の決算後の値動き、そして決算後にどう行動するかという事前準備とルールこそが重要です。
プロ投資家は、勝てそうな場面だけを選び、リスクが高いと判断した決算は無理に跨ぎません。その姿勢こそが、長く相場で生き残るための考え方です。
もし今回紹介したルールの中で一つでも曖昧な点があれば、決算またぎを見送る判断も立派な選択です。