株の決算を見ると、数字や専門用語が多くて「結局どこを見ればいいの?」と感じる方は少なくありません。
しかし、すべてを理解しようとする必要はなく、見るべきポイントは実は限られています。
この記事では、投資初心者の方でも迷わず確認できるよう、決算で本当に大切な数字だけを分かりやすく解説します。
決算を見る前に最低限知っておきたいこと

決算を見るときに、いきなり数字を細かく追い始めると高確率で挫折します。
初心者のうちは、まず「決算って何を見るものなのか」をざっくり理解しておくだけでOKです。
1. 決算は「会社の成績表」くらいの理解でいい
決算とは、簡単に言えば
「この期間で会社はどれくらい稼げて、今後どうなりそうか」をまとめた成績表です。
テストの点数を細かく分析する前にまず「上がったか」「下がったか」を見る。
これと同じ感覚で大丈夫です。
初心者がいきなり
「営業CFが〜」「EBITDAが〜」
と考える必要はありません。
2. 決算短信と有価証券報告書の違いは気にしなくていい
決算には主に2つの書類があります。
- 決算短信:超要点まとめ(初心者はこれだけでOK)
- 有価証券報告書:細かすぎる完全版(今は不要)
最初は、決算短信だけ見れば十分です。
有価証券報告書を読もうとして「意味わからん…」となるのが、よくある失敗パターンです
3. 四半期決算は「前と比べてどうか」がすべて
決算の数字は、単体で見ても意味がありません。
大事なのはこの2つだけ。
- 前年と比べて増えているか?減っているか?
- 会社が出していた予想と比べてどうか?
たとえば「利益50億円!」と聞いても
- 去年は30億円だったのか
- 予想は60億円だったのか
これで評価は180度変わります。
👉 決算は必ず「比較」で見る
これだけ覚えておけばOKです。
※四半期の意味があいまいだと、比較自体ができません。
1Q・2Q・3Q・4Qは何月?四半期決算の時期と株価への影響を解説した記事もご覧ください。
4. 決算は完璧に理解しなくていい
初心者のうちは「全部理解しないと投資しちゃダメ」と思いがちですが、これは間違いです。
実際、多くの個人投資家は
- 全部読んでいない
- 分からない部分は飛ばしている
それでも問題なく投資しています。
まずは「会社は成長してる?」「今後も伸びそう?」これが分かれば合格点です。
初心者は「3つの数字」だけ見れば十分

最初に結論をお伝えします。
初心者が決算で見るべき数字は、次の3つだけで問題ありません。
- 売上が伸びているか
- 利益が増えているか
- これから先も成長しそうか
なぜなら、株価は「会社が大きくなり続けるかどうか」で決まるからです。
細かい項目を見る前に、この3点を押さえるだけで、大きな失敗は避けやすくなります。
① 売上高|会社の成長スピードを見る数字
売上高は、会社がどれだけ商品やサービスを売れたかを示す数字です。
まず最初に確認したいのが、この売上の動きになります。理由は簡単で、売上が伸びていない会社は、将来大きくなりにくいからです。
利益は一時的に増えることもありますが、売上はごまかしにくい数字といえます。
見るときのポイントは、前年と比べてどうなっているかです。
- 前年より増えている → 成長している可能性が高い
- ほぼ変わらない → 成長が止まっているかもしれない
- 減っている → 注意が必要
売上は「会社の体力テストの点数」のようなものと考えると分かりやすくなります。
② 利益|会社がきちんと儲かっているかを見る
次に確認したいのが利益です。
利益とは、売上から必要な費用を引いた後に残るお金を指します。
売上が増えていても、利益が出ていなければ意味がありません。なぜなら、儲からない状態が続くと、会社は長く続かないからです。
初心者の方は、細かい利益の種類を覚える必要はありません。
まずは次の点だけを確認しましょう。
- 利益が黒字か赤字か
- 前年より増えているか
黒字が続き、少しずつ増えている会社は、安定していると判断しやすくなります。
③ 来期の見通し|株価が一番気にするポイント
決算で特に重要なのが、これから先の見通しです。
株価は過去よりも、未来を重視して動きます。
たとえ今の決算が良くても、「次は売上が下がりそう」「利益が減りそう」と発表されると、株価は下がりやすくなります。
確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 来期も売上が伸びる予定か
- 利益は増える見込みか
- 厳しい説明が多くないか
株価は「これからワクワクできるかどうか」で動くと考えると理解しやすくなります。
初心者が無理に見なくていい項目

初心者が決算で混乱する一番の原因は、「重要そうに見えるけど、実は判断に使いにくい数字」を追ってしまうことです。
株価はシンプルに、
- 成長しているか
- 儲かっているか
- これから先も期待できるか
この3点で動くため、そこに直結しない項目は後回しで問題ありません。
1. キャッシュフロー計算書(初心者は後回しでOK)
キャッシュフロー計算書は、お金の流れを示す重要な書類です。ただし、初心者には少し難しく、判断を誤りやすい項目でもあります。
理由は、数字の増減が一時的な要因で大きく変わりやすいためです。
- 設備投資で一時的にマイナスになる
- 借金の返済で数字が動く
- 特別な取引でブレやすい
これらを正しく理解するには経験が必要です。
売上・利益・見通しが分かるようになってから見るで十分といえます。
キャッシュフロー計算書については、キャッシュフローの見方をわかりやすく解説からご覧ください。
キャッシュフロー計算書について詳しく知りたい方は、キャッシュフローの見方を初心者向けに解説した記事をご参照ください。
2. EPS(一株当たり利益)を深追いしなくていい
一株あたり利益は、株の価値を見る指標としてよく紹介されます。しかし初心者のうちは、無理に計算や比較をする必要はありません。
なぜなら、次のような要因で数字が変わるからです。
- 株の数が増減すると上下する
- 一時的な利益で大きく動く
- 他社との単純比較が難しい
利益そのものが増えているかどうかを見ていれば、最初は十分です。
EPS(一株当たり利益)について詳しく知りたい方は、EPS(一株当たり利益)を初心者向けに解説した記事をご参照ください。
3. 営業利益率などの細かい割合
営業利益率は、効率よく儲けているかを見る数字です。ただし、初心者には少しハードルが高めになります。
理由として、業界ごとに基準が大きく違う点が挙げられます。
- 商社と飲食店では全く違う
- 成長途中の会社は低くなりやすい
- 一時的な投資で下がることもある
「前年より大きく悪化していないか」程度を感覚で見るくらいで十分です。
4. 注記・補足説明の細かい文章
決算資料の後半には、細かい文章説明が多く並びます。ここは、初心者が一番疲れてしまうポイントです。
もちろん大切な情報もありますが、最初は以下の理由で飛ばして構いません。
- 専門用語が多い
- 会計ルールの説明が中心
- 直接の売買判断につながりにくい
社長コメントや見通し説明だけ拾う意識で問題ありません。
5. 一回だけの特別な数字
以下のような項目も、初心者は深追い不要です。
- 特別利益
- 特別損失
- 一時的な減損
これらは、毎年続くものではないため、将来予測には使いにくいからです。
一回限りの出来事で一喜一憂しないことが大切になります。
初心者がやりがちな決算の勘違い

決算を見始めたばかりの頃は、誰でも同じような勘違いをします。
ここを先に知っておくだけで、無駄な損や不安をかなり減らせます。
1. 黒字=安心、赤字=ダメな会社だと思ってしまう
初心者が一番やりがちなのがこの考え方です。
確かに黒字のほうが聞こえはいいですが、黒字=良い会社、赤字=危険とは限りません。
たとえば
- 成長投資のために一時的に赤字
- 新規事業にお金を使って利益が減っている
こういう会社は、将来の成長を期待されて株価が上がることもあります。
👉 赤字かどうかより「今後どうなりそうか」が重要です。
2. 増収減益=悪い決算だと決めつける
「売上は増えてるのに利益が減ってる」
これを見ると不安になりますよね。
でも、増収減益=即アウトではありません。
- 広告費を増やした
- 人材採用に投資した
- 原材料高など一時的な要因
こうした理由なら、一時的に利益が減るのは普通です。
逆に売上が伸びていないのに利益だけ出ているほうが、将来的には危険なケースもあります。
3. 数字の大きさだけで判断してしまう
「利益100億円!」
「売上1兆円!」
数字が大きいと、ついすごそうに見えます。
でも重要なのは
- 去年と比べて増えているか
- 会社予想と比べてどうか
です。
規模の大きい会社は、もともと数字も大きいだけ。
👉 「増えたか・減ったか」を見ないと意味がありません。
4. 決算が良かった=株価は必ず上がると思ってしまう
これもよくある勘違いです。
実際は
- すでに期待されていた
- 来期予想が弱かった
- 材料出尽くしだった
などの理由で、良い決算でも株価が下がることは普通にあります。
決算は「過去+これから」を市場がどう評価するか、という話です。
5. 分からない項目まで全部理解しようとする
真面目な人ほど陥りがちなのがこれ。
- 注記
- 細かい指標
- 専門用語
ここで詰まって「自分には無理だ…」となる人が本当に多いです。
でも大丈夫です。
👉 初心者は分からないところは飛ばしてOK
まとめ|決算は「完璧に理解」しなくていい
決算の見方は、最初から難しく考える必要はありません。
売上・利益・将来の見通しの3点だけを順番に確認することで、十分な判断ができます。
慣れてきたら少しずつ理解を深めれば問題ありません。
まずは「会社が成長していそうかどうか」を見る習慣をつけることが、投資で失敗しにくくなる第一歩です。