BPS(一株当たり純資産)は、1株当たりの純資産価値を表す指標です。BPSが高いほど、企業の財務基盤が安定していると評価されます。
この記事では、BPSの基本的な理解からその計算方法、具体的な分析の実例、そして投資判断にどのように活用するかを詳しく解説します。
投資の知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
BPS(一株当たり純資産)とは?
BPS(一株当たり純資産)とは、財務健全性を評価するために用いられる指標の一つです。
簡単に言うと、「もし会社を解散して、すべての資産を現金に変えてから借金を返した場合、1株あたりどれくらいの金額が手元に残るのか」を表しています。
この数字が高いほど、「その会社はたくさんの資産を持っていて、経営の土台がしっかりしている」と評価されることが多いです。
つまり、お金や建物などの資産がたっぷりあり、借金が少ない会社ほど、BPSが高くなる傾向があります。
ただし、BPSの値だけを見て「良い会社だ」と決めるのは危険です。
その会社がどれだけ利益を出しているか、株価が割安なのか、会社の成長性はどうかなども合わせて見ないと、正しい判断はできません。
1. どこに記載してある?
最新のBPS(一株当たり純資産)は、さまざまな株の情報サイトで調べることができます。
たとえば、Yahoo!ファイナンスや株探(かぶたん)、または三菱UFJ eスマート証券、マネックス証券といった証券会社のホームページでも確認できます。
中でも「株探」はとても見やすくて人気のあるサイトです。
2. BPSはいつ変わるの?
BPSは、会社の「純資産」や「株の枚数」が変わるたびに動きます。
特に以下のような出来事があると、BPSに影響が出ます。
- 決算(年4回ほど発表される収支報告)
- 新しく株を発行したとき
- 自分の会社の株を買い戻して減らしたとき(自己株式の取得や消却)
- 持っている土地や建物の価値が変わったとき(資産の見直し)
こうした変化は、主に四半期ごとの決算発表にあわせて起こるため、決算ごとにBPSの動きをチェックするのがおすすめです。
3. 他の大切な数字(指標)もあわせて見ましょう
BPSのほかにも、企業を評価するための数字はいくつかあります。
たとえば以下のようなものです。
こうした数字を組み合わせることで、その企業がどのくらい安定しているか、今後も伸びていきそうかが見えてきます。
BPS(一株当たり純資産)の計算方法
BPSは、純資産を発行済株式数で割ることで算出されます。
最新のBPSは、株探やYahoo!ファイナンスなどで確認できますので、わざわざ計算する必要はありませんが、一応説明します。
以下の計算式で求められます。
純資産:全資産から全負債を引いたもの
発行済株式数:発行している全ての株式の数
例1:シンプルなBPSの計算
- 総資産:50億円
- 総負債:20億円
- 発行済株式数:100万株
この場合、次のように計算されます。
純資産=総資産−総負債=50億円−20億円=30億円
次に、BPSを計算します。
したがって、一株当たり純資産は3000円となります。
例2:より複雑なBPSの計算
- 総資産:120億円
- 総負債:60億円
- 発行済株式数:200万株
- その他の資本調整:5億円(ストックオプションなど)
この場合、次のように計算されます。
純資産=総資産−総負債+その他の資本調整=120億円−60億円+5億円=65億円
次に、BPSを計算します。
したがって、一株当たり純資産は3250円となります。
BPS(一株当たり純資産)の判断方法
BPSを正しく理解することで、その企業の安定性や将来性を判断しやすくなります。
ここでは、BPSをどのように読み取ればよいのか、4つの視点から説明いたします。
1. 過去の動きを確認する
まずは、BPSがこれまでどのように変わってきたかを見てみましょう。
もし、BPSが毎年少しずつ増えているなら、その企業は安定して利益を出し続け、純資産も増やしていることになります。これはとても良いサインです。
逆に、BPSが急に増えたり減ったりしている場合は、その理由を調べることが大切です。
たとえば、大きな買い物(企業の買収など)や資産の売却、新しい株を発行したことなどが影響している可能性があります。

2. 同じ業界の会社と比べる
BPSは、会社の種類によって高かったり低かったりします。そのため、同じ業界の企業と比べることが大切です。
たとえば、銀行や不動産、工場などをたくさん持つ会社は、資産が多いためBPSも高くなる傾向があります。
一方で、人が中心となって働くサービス業や、技術の会社(たとえばソフト開発など)は、BPSが低めでもおかしくありません。

3. 長く保有する株の判断材料にする
BPSは、「もし会社がなくなったら、株主にどれくらいお金が戻ってくるか」という目安にもなります。このことから、長く持つ株を選ぶときの判断材料としても役立ちます。
BPSが高い企業は、たくさんの資産を持っていて、急に倒産する心配が少ないと考えられます。そのため、安心して長期投資がしやすい企業だと判断されることがあります。
4. 株価と比べて、割安か割高かを考える
BPSと現在の株価を比べると、その株が「安いのか、高いのか」の目安になります。
たとえば、ある企業のBPSが1万円なのに、株価が1万2千円だったとします。
このとき、投資家たちは「この会社は将来もっと利益を出すだろう」と考えていて、株に高い値段をつけていることになります。
反対に、BPSが5,000円なのに株価が4,500円のような場合は、「いまはあまり評価されていない」もしくは「将来への期待が少ない」と見られている可能性もあります。

BPS(一株当たり純資産)の実例
ここでは、実際の企業の数字を使って、BPSがどのように計算されるのかを説明します。
1. 例1: トヨタ自動車(7203)
まずは、日本を代表する大手企業・トヨタ自動車を例に見ていきましょう。
・純資産:30兆円
・発行済み株式数:30億株
この場合のBPS(=一株あたり純資産)は、30兆円 ÷ 30億株 = 10,000円 となります。
トヨタの株を1株持っていると、その株には1万円分の純資産があるということになります。
トヨタは自動車業界の中でも、世界的に知られている安定した企業です。そのため、BPSが高く、財務のしっかりした会社だと判断されやすくなります。
2. 例2: ソニー(6758)
次に、家電や音楽、映画など幅広い分野で活躍しているソニーの例を見てみましょう。
・純資産:6兆円
・発行済み株式数:12億株
この場合のBPSは、6兆円 ÷ 12億株 = 5,000円 です。
1株あたり5,000円分の純資産がある、という意味になります。
ソニーは、新しい技術やサービスを次々と生み出すことで成長している企業です。BPSはトヨタよりも低めですが、純資産だけでなく成長性や市場での存在感も評価されています。
BPS(一株当たり純資産)のよくある質問
Q1. BPSは高いほど良いのですか?
一般的に、BPSが高い企業は「財務的にしっかりしている」と言われます。しかし、それだけを見て投資の判断をするのは注意が必要です。
BPSは企業がどれだけの純資産を持っているかを表すものですが、企業の儲けの力(収益性)やこれからの成長、景気の動きなども合わせて考える必要があります。
他の数字(たとえば利益率や売上の伸び)も一緒に見て、全体のバランスで判断することが大切です。
Q2. BPSが低い会社には投資しない方が良いですか?
必ずしもそうとは限りません。
たとえBPSが低くても、その会社がこれから大きく成長する見込みがある場合、投資のチャンスになることもあります。
特に、新しく始まったばかりの会社(新興企業)や、成長段階にある会社は、まだ純資産が少ないことが多いです。
それでも、将来の儲けや市場での強さが期待できる場合は、注目する価値があります。そのため、BPSだけでなく、その会社の将来性もよく見ることが大切です。
Q3. マイナスになることはありますか?
はい、あります。
会社の持っている資産よりも借金などの負債が多くなったとき、BPSはマイナスになります。
この状態は、会社の財務状況がかなり悪くなっているサインです。すぐに倒産するとは限りませんが、投資する際には十分に注意が必要です。
Q4. どんなことが原因で変わるのですか?
BPSは、会社の純資産の変化や、株式の数の増減によって動きます。
たとえば、新しく株を発行したり、自社の株を買い戻したりした場合。または、会社のもうけが積み上がって資産が増えた場合などに、BPSが変わります。
逆に、大きな損失が出た場合には、BPSが下がることもあります。
Q5. 業界によってBPSの目安は違うのですか?
はい、業界によってBPSの高さには違いがあります。
たとえば、銀行や不動産、工場を持つ会社のように「資産を多く持っている業種」では、BPSが高くなりやすいです。
一方、サービス業やインターネット関連の会社などは、目に見える資産が少ないため、BPSが低めでも問題ないことがあります。
BPSを見るときは、その業界の特性や、同じような会社と比べることがポイントです。
まとめ
BPS(一株あたり純資産)は、会社の「体力」や「安定性」を知るための大切な数字です。
計算はわかりやすく、「会社の純資産 ÷ 株の数」で求められます。
ただし、これだけで投資を判断するのではなく、利益や成長、業界の特徴など、いろいろな情報をあわせて考えることが大切です。
株を買うときは、1つの数字にとらわれず、全体を見て判断するようにしましょう。