株式投資を行うとき、企業の本当の価値を知るためには、さまざまな数字(指標)を見て判断することが大切です。
その中でも「PBR(株価純資産倍率)」という指標は、その会社が持っている資産と比べて、株価が高いのか安いのかを知るための大切な目安になります。
この記事では、PBRの意味、計算の仕方、そしてPBRを使った株の見方について、順番にご説明いたします。
PBR(株価純資産倍率)とは?
PBR(株価純資産倍率)とは、「株価がその会社の持っている純資産と比べて、どれくらいの価値があるか」を表す数字です。
「PBR」というのは、英語の「Price Book-Value Ratio」の頭文字を取った言葉で、日本語では「株価純資産倍率(かぶかじゅんしさんばいりつ)」と呼ばれています。
この数字を見れば、その会社の株が「安いのか高いのか」を考える手がかりになります。ただし、PBRだけを見て判断するのは危険です。他にも大切な数字がいくつかあります。
たとえば、
・PER(株価収益率):その会社がどれくらい利益を出しているか
・ROE(自己資本利益率):会社がお金をうまく使って利益を出せているか
これらも合わせて見ることで、より正しい判断ができるようになります。
また、PBRは「割安な株」を見つける「バリュー投資」や、「これから成長しそうな会社」を探すときにも、役に立つ指標のひとつです。
1. どこに記載してある?
最新のPBR(株価純資産倍率)は、さまざまな株の情報サイトで調べることができます。
たとえば、Yahoo!ファイナンスや株探(かぶたん)、または三菱UFJ eスマート証券、マネックス証券といった証券会社のホームページでも確認できます。
中でも「株探」はとても見やすくて人気のあるサイトです。
2. 目安は?
一般的に、PBRの目安は以下の通りです。
・1倍以下のとき
株の値段が、その会社の純資産よりも低くなっていることを意味します。
これは、「この会社は将来もうからないかもしれない」と、市場がネガティブに見ている可能性があります。
・1倍より高いとき
株価が純資産を上回っている状態です。
市場はその会社に「これからも成長しそうだ」と期待していることが多いです。ただし、この1倍という目安は、すべての会社に当てはまるわけではありません。
たとえば、新しい技術を持っている会社や、これから大きく伸びると見られている業種では、PBRが2倍や3倍になっていても「高すぎる」とは限りません。
PBR(株価純資産倍率)の計算方法
最新のPBRは、株探やYahoo!ファイナンスなどで確認できますので、わざわざ計算する必要はありませんが、一応説明します。
1. 基本的な計算式
PBRは以下の式で計算されます。
例えば、ある企業の株価が1,000円で、一株当たり純資産(BPS)が500円である場合、その企業のPBRは2倍となります。
これは、株価が純資産の2倍で取引されていることを意味します。
PBRの計算には、株価と一株当たり純資産(BPS)を知る必要があります。
これらの情報は、企業の財務諸表や株価情報サイトで確認することができます。
Yahoo!ファイナンスだと、参考指標のところに記載しています。
一株当たり純資産(BPS)は、純資産を発行済み株式数で割ったものです。
BPSの計算式は以下の通りです。
純資産は、財務諸表から確認できます。発行済株式数は、企業が市場に発行している全ての株式の数です。決算書や企業の公式発表で確認できます。
2. 具体的な計算例
ある企業の財務状況が、総資産: 500億円、総負債: 200億円、発行済み株式数: 1億株の例で説明します。
まず、純資産を計算します。
純資産=総資産−総負債=500億円−200億円=300億円
次に、一株当たり純資産(BPS)を計算します。
この場合、一株当たり純資産(BPS)は3000円となります。
次に、この企業の株価を使ってPBRを計算します。
株価が4500円の場合、
この場合、PBRが1.5ということは、株価が純資産の1.5倍で取引されていることを意味します。
PBR(株価純資産倍率)の見方と判断方法
PBRを使うことで、会社の株が「安いのか、高すぎるのか」を判断する手がかりになります。
ここでは、4つのポイントに分けてご説明いたします。
1. 割安か割高かを見極める
PBRが1を下回っているときは、その会社の株価が「持っている資産よりも安く見られている」ことを意味します。こうした場合、株が割安だと判断されることがあります。
反対に、1を超えているときは、「資産以上の価値がある」と評価されている状態です。

2. 同じ業界の会社と比べる
PBRは、同じような仕事をしている会社同士で比べると、より分かりやすくなります。
たとえば、A社のPBRが1.5、B社が0.5だったとしましょう。この場合、B社のほうが株価が割安かもしれないという見方ができます。
ただし、単に数字が小さいから良いとは限りません。

3. 成長中の会社と安定した会社を見分ける
これから大きく伸びていく「成長企業」は、将来のもうけが期待されるため、PBRが高くなりやすい傾向があります。
反対に、すでに成長が落ち着いていたり、業績が良くない会社では、PBRが低くなることがあります。

4. 財務の安定性もチェック
PBRが低い会社は、いち見たところ「安くてお得」に思えるかもしれません。しかし、会社のお金の使い方や借金の量もしっかり確認することが大切です。
もしもその会社がお金に余裕があって安定しているなら、安心して投資できる可能性があります。反対に、借金が多くて経営が苦しい会社の場合、PBRが低くても危ないことがあります。

PBR(株価純資産倍率)を見るときの注意点
PBRは便利な指標ですが、使い方を間違えると判断を誤るおそれもあります。
ここでは、PBRを見るときに気をつけたい5つのポイントをご紹介いたします。
1.短い期間の変化にまどわされない
PBRの数字は、株価の動きによってすぐに変わることがあります。
たとえば、景気が悪くなったり、ある業界だけに問題が起きたりすると、一時的にPBRが下がることがあるのです。

2.業種によって「ちょうどいいPBR」は違う
「PBRは1が基準」とよく言われますが、すべての会社に当てはまるわけではありません。業種によって、ちょうどいいPBRの目安は変わってきます。
たとえば、製造業のように設備や工場が多い業種では、1倍前後が普通とされます。これより低いと「資産よりも安く見られている」状態と考えられ、割安に見えることもあります。
一方、サービス業や技術を売りにする会社では、目に見えない価値(ブランドやノウハウなど)を多く持っているため、PBRが2〜3倍と高くてもおかしくありません。

3.株の数が変わるとPBRも変わる
会社が自分の株を買い戻したり、新しい株を発行したりすると、株の数が変わります。そ
うなると、「1株あたりの純資産(BPS)」も変化し、それにともなってPBRも変わってしまいます。

4.資産の中身をよく見る
PBRは会社の資産をもとにした数字ですが、「どんな資産を持っているか」までは教えてくれません。
たとえば、製造業の会社は、工場や機械など形のある資産が多い傾向にあります。一方で、サービス業の会社は、名前の知名度や特許といった形のない資産が中心になることが多いです。

5.PBRだけで決めつけない
PBRは便利な目安ではありますが、それだけで投資判断をするのは危険です。
たとえば、「PER(株価収益率)」や「ROE(自己資本利益率)」といった他の指標と一緒に見ることで、会社の本当の力が見えてきます。

PBR(株価純資産倍率)のよくある質問
Q1. PBRが高いと、どういう意味ですか?
PBRが高いというのは、株価がその会社の純資産(持っている財産)よりも、かなり高く評価されていることを意味します。
このような場合、市場の人たちは「この会社はこれからもっと成長する」「たくさんもうける力がある」と考えている可能性があります。
ただし、期待が先行しているだけで、実際の中身がともなっていないこともあります。中身も一緒にしっかり確認することが大切です。
Q2. PBRが低いのは、どういうことですか?
PBRが低いときは、その会社の株価が、持っている財産(純資産)に対して安く見られていることを表します。
つまり、「この会社の価値はもっとあるのに、安く売られているかもしれない」ということです。
市場から「成長しないのでは」「もうけが少ないのでは」と心配されているケースもありますが、逆に、お買い得な株として注目されることもあります。
Q3. PBRがマイナスになることはあるのですか?
ふつうはマイナスにはなりませんが、まれに「純資産がマイナス」になる会社もあります。
これは、借金などの負債が持っている財産よりも多いということで、かなり危険な状態です。
このような会社ではPBRの計算ができず、投資も慎重に考える必要があります。
Q4. PBRが低い会社は買ったほうがいいですか?
「PBRが低い=お得」と思われがちですが、それだけで判断するのはおすすめできません。
たとえば、その会社が赤字続きだったり、今後の成長が見込めなかったりすると、株価はずっと上がらない可能性があります。
PBRの数字だけを見るのではなく、しっかり調べて、理由を理解することがとても大切です。
Q5. 日本の株とアメリカの株でPBRに違いはありますか?
はい、違いがあります。
一般的に、アメリカの株はPBRが高めに出ることが多いです。これは、将来の成長や技術力に期待して投資する人が多いためです。
一方、日本の株は、古くからある会社が多く、安定性を大切にする投資家が多いため、PBRが低めになる傾向があります。
まとめ
PBRは、株価と会社の財産を比べるための大切な数字です。「今の株価が高いか安いか」を考えるヒントになります。
ただし、PBRだけで投資を決めてしまうと失敗することもあります。
他の指標(たとえばPERやROE)や、会社の業種・特徴などもあわせて見ながら、総合的に判断することが成功への近道です。