株式投資をはじめるときに、ぜひ知っておきたい大切な数字があります。
それがPERです。これは「株価収益率」と呼ばれ、会社の利益に対して今の株価が高いのか安いのかを判断するための目じるしになります。
たとえば、「この会社の株は安いのかな?」「今が買いどきなのかな?」と思ったときに、PERを参考にすると考えるヒントが見えてきます。
このあとの内容では、次のようなことを説明していきます。
- PERってなに?どんな意味があるの?
- どうやって計算するの?
- 高いとどうなる?低いとどう見える?
- どんなふうに投資に役立つの?
はじめて株を勉強する方にも分かりやすいように、具体的な例もまじえながら説明します。
これを読めば、PERを見て「なんとなく」ではなく、しっかり考えて投資判断ができるようになるはずです。
PER(株価収益率)とは?
PER(株価収益率)とは、「その会社の株が利益に対してどれくらいの値段で買われているか」を表す数字です。
これを見ることで、株が高すぎるのか、それともお買い得なのかを知る手がかりになります。
なぜPERが大切かというと、その会社がどれくらいの利益を出しているかに対して、株価が高すぎないかを判断できるからです。
たとえば、同じような業種の会社と比べてPERが高い場合は、「ちょっと株価が高すぎるかも?」と考えられます。逆に、低ければ「今は割安かもしれない」と判断することもできます。
たとえば、お弁当屋さんが1年間で10万円の利益を出しているとします。そのお店の株が100万円だったら、PERは「10倍」になります。
このように、利益に対して何倍の価格がついているかを見るのがPERです。
PERは株の買い時や売り時を考えるうえでとても役立つ数字です。会社の実力に対して株価が高すぎないかを知るために、ぜひ活用してみてください。
1. どこに記載してある?
最新のPER(株価収益率)は、さまざまな株の情報サイトで調べることができます。
たとえば、Yahoo!ファイナンスや株探(かぶたん)、または三菱UFJ eスマート証券、マネックス証券といった証券会社のホームページでも確認できます。
中でも「株探」はとても見やすくて人気のあるサイトです。
2. 株探で過去のPERを見るには?
過去のPERのデータも、「株探」で見ることができます。
ただし、過去の一覧表やグラフのような推移を見るには、有料の「株探プレミアム」に申し込む必要があります。
このデータは「ヒストリカルPER」という名称になります。PERの分析には非常に便利なので、ぜひお試しいただきたいです。
3. 目安は?
PERを見ることで、その株が割安なのか、割高なのかのヒントが得られます。
以下は、よく使われている目安です。
- 10倍以下:割安
- 10〜20倍:適正価格
- 20倍以上:割高
ただし、これはあくまでも目安です。企業ごとの特徴や、業界の状況によっても変わってきます。
PERが高い場合、株価が利益に対して割高とされることが多いです。しかし、高PERの企業は将来の成長が期待されている場合が多く、成長株に多く見られます。
PERが低い場合、一般的には株価が利益に対して割安とされることが多いです。ただし、低いPERが必ずしも良い投資先を意味するわけではなく、業績悪化の懸念がある場合もあります。
たとえば「PERが9倍だから安い」と思ってすぐに買ってしまうと、後悔することもあります。
PERだけで判断せず、利益や将来性、業界の流れなどもいっしょに見ていくことが大切です。
PER(株価収益率)の計算方法
PERの計算は、株価を一株当たり利益(EPS)で割ることで簡単に行えます。
最新のPERは、株探やYahoo!ファイナンスなどで確認できますので、わざわざ計算する必要はありませんが、一応説明します。
1. 基本的な計算式
PERは以下の式で計算されます。
例えば、ある企業の株価が1,000円で、一株当たり利益(EPS)が100円である場合、その企業のPERは10となります。
まず、株価と一株当たり利益(EPS)を知る必要があります。
これらの情報は、財務諸表や株価情報サイトで確認することができます。
株探だと、修正1株益のところに記載しています。
決算期の前に「予」と記載しているのが最新の1株益になります。この時の株価が3,000円だった場合は、PER11.3倍です。
一株当たり利益(EPS)は、純利益を発行済株式数で割ったものです。
EPSは、企業が株主にどれだけの利益をもたらしているかを示す指標です。
EPSの計算方法は以下の通りです。
純利益は、総収益から全ての経費を差し引いた後の利益です。
純利益は決算書に記載。
発行済株式数は、企業が市場に発行している全ての株式の数です。
これも決算書や企業の公式発表で確認できます。
2. 具体的な計算例
ある企業の株価が1000円である。その年間純利益が1億円であり、発行済株式数が100万株である例で説明します。
まず、EPSを計算します。
次に、PERを計算します。
この場合、PERは10となります。これは、現在の株価が一株当たり利益の10倍です。
PER(株価収益率)の見方と判断方法
PERを使って株価が高いのか安いのかを考えるには、いくつかの見方があります。
ここでは4つのポイントに分けて、順番に分かりやすくご説明いたします。
1. 過去のPERと比べる
まずは、同じ会社の過去のPERと、今のPERを比べてみましょう。
この比較によって、今の株価が「これまでと比べて安いか、それとも高いか」が見えてきます。
たとえば、過去3年間の平均PERが20倍で、今が15倍なら「今の株は過去よりもわりと安いかもしれない」と考えることができます。
反対に、今のPERが15倍で、これまでの平均が10倍だった場合は「今は少し高めかもしれない」と判断されることもあります。
ただし、PERだけで判断せず、会社の売上や利益、世の中の景気なども合わせて考えることが大切です。
2. 同じ業界の会社と比べる
次に、同じような仕事をしている会社(同業他社)との比較も役に立ちます。
たとえば、同じ業界のA社のPERが20倍で、B社が15倍だったとします。
このとき、B社の方が利益に対して株価が安く見えるため、「割安だ」と判断されることがあります。ただし、株の値段は将来の期待や会社の安定感にも大きく影響します。
数字だけではなく、その会社の「中身」もよく見ておきましょう。
3. 成長する会社と、落ち着いた会社の違いを見る
PERは、会社の成長のスピードによっても変わってきます。
これから大きく伸びそうな会社(成長企業)は、利益がまだ少なくても期待が大きいため、PERが高くなることがあります。
反対に、すでに落ち着いた会社(成熟企業)は、利益が安定していても成長がゆるやかなため、PERが低めになることも多いです。
たとえば、PERが50倍と聞くと「高い」と思うかもしれませんが、将来の利益がどんどん増える会社であれば、それだけの価値があると見なされることもあります。
- ITや新しい医療分野の会社など → PERが高くなることが多い。
- 製造業やインフラの会社など → 比較的PERが低めになりやすい。
このように、業界の特徴も意識しながらPERを見ていくと、より正確な判断につながります。
4. 利益の安定性を確かめる
最後に見ておきたいのは、その会社の利益が安定しているかどうかです。
利益が毎年しっかり出ている会社であれば、PERが少し高くても「安心して投資できる」と思われることがあります。
逆に、利益が年ごとに大きく変わる会社は、PERが低くても不安が残ることがあります。
利益の安定性を知るには、「決算短信」という会社の発表を見るとよいでしょう。
これには、売上や利益の数字がくわしく書かれていて、過去の流れも見やすくなっています。
PER(株価収益率)を見るときの注意点
PERを使って株の価値を判断するときには、いくつかの気をつけたい点があります。
それぞれの項目を、ひとつずつ見ていきましょう。
1. 利益の一時的な変動
企業の利益が一時的に増減する場合、PERはその影響を大きく受けます。
一時的な利益増加でPERが低く見える場合がありますが、これは持続可能な利益水準でない可能性があります。逆に、一時的な損失でPERが非常に高くなる場合もあります。
これを見極めるために、過去数年間のデータを参照することが重要です。
過去のPERデータは、株探サイトで入手できます。ただし、過去の一覧と推移チャートは、株探プレミアムの申し込みが必要です。
2.業種によって、ちょうどよいPERはちがう
PERの「ちょうどよい目安」は、業界ごとに異なります。
たとえば、新しい分野や成長の早い業界では「今は利益が少なくても、将来はもっと伸びる」と期待されるため、PERが高めでもおかしくありません。
一方、安定した業界では、急成長はあまり見込まれないため、PERが低めでも普通です。
▽ 例をあげると…
・技術や医療などの新しい分野(ITやバイオなど) → 高めのPERでも妥当とされることがあります。
・電気・水道などの公益事業や、日用品を扱う会社 → 利益が安定しているため、低めのPERがよく見られます。
このように、その業界の特徴や、株式市場の環境を理解してからPERを見ることが、とても大切になります。
3. PERだけで判断しないこと
PERはとても便利な数字ですが、それだけで投資判断をするのは危険です。
他にも「PBR(株価純資産倍率)」や「ROE(自己資本利益率)」といった指標も合わせて見ることで、会社の本当の力をより正しく知ることができます。
いくつかの数字を組み合わせて考えることで、判断ミスを減らすことができますよ。
4. 株があまり売買されていない場合
株の売買が少ない(=流動性が低い)会社では、PERの数字が正しくない可能性があります。
なぜなら、取引される回数が少ないと、ちょっとした売買でも株価が大きく動いてしまうからです。
このような会社の株は、PERの数字がブレやすく、判断がむずかしくなることがあります。
PER(会)とPER(C)は何が違う?
PER(株価収益率)には、「PER(会)」と「PER(C)」の2種類があります。
これらの違いを理解することで、より正確な投資判断が可能になります。
・PER(会)=過去の実績EPSに基づく株価収益率
・PER(C)=予測EPSに基づく株価収益率
投資判断には、PER(会)とPER(C)の双方を比較することで、現在の株価が割安か割高か、また成長性が評価されているかを総合的に把握することが重要です。
以下、それぞれの特徴と違いについて詳しく解説します。
1. PER(会)とは
「PER(会)」は、会社が実際に発表した過去の決算データをもとにしたPERです。
すでに確定している利益を使っているので、信頼性が高く、数字のブレが少ないのが特ちょうです。
ただし、株価というのは「これからの期待」もふくまれているため、PER(会)だけでは将来の成長まで見えないことがあります。
2. PER(C)とは
「PER(C)」は、証券会社の専門家(アナリスト)が予測したこれからの利益を使って計算するPERです。そのため、「今の株価は、将来の利益と比べてどうなのか?」を見るのに役立ちます。
成長が期待されている会社では、PER(C)を見ることで将来に対する市場の評価がわかります。
ただし、予測はあくまで予測です。実際の業績が予想と違えば、数字は大きく変わることがあります。
3. どう使い分ければよいか?
どう使い分ければよいか?
・安定した企業に投資したいときは、PER(会)のほうが安心です。
・これから成長しそうな企業を探している場合は、PER(C)のほうが参考になります。
どちらか一方だけではなく、二つを見比べることで、より深い理解が得られます。
PER(株価収益率)のよくある質問
Q1. 業種によってPERは変わりますか?
はい、業種ごとにPERの平均は違います。
たとえば、電気や水道などの安定した事業を行っている会社は、大きな成長が見込まれにくいため、PERが低くなることが多いです。
一方、今後の成長が期待されているIT企業などは、将来の利益が大きくなると考えられているため、PERが高くなる傾向があります。
Q2. PERがマイナスになることはありますか?
はい、あります。これは、その会社が赤字になっているという意味です。
赤字の場合、1株あたりの利益(EPS)がマイナスになるので、PERもマイナスになります。
このようなときは、PERでは会社の良し悪しを判断できません。他の指標や業績の回復見込みを見ることが大切です。
Q3. PERを使うときのポイントは何ですか?
PERを活用するときは、以下のような視点で見るのがおすすめです。
・同じ業界の会社と比べる
・その会社の過去のPERと比べてみる
これからの利益予想をもとにした「予想PER」もあわせて見る
また、PERだけに頼るのではなく、株価純資産倍率(PBR)や自己資本利益率(ROE)など、他の数字も確認することが大切です。
市場の動きや会社のニュースもあわせて見ておくと安心です。
Q4. どのくらいの頻度でチェックすればいい?
とくに決算発表のあとに確認するのがよいでしょう。
企業の利益が大きく変わったときには、PERも大きく動くことがあります。
四半期(3か月ごと)の決算が出たあとや、業績予想が発表されたときには、かならず確認するようにしましょう。決算短信と一緒に見ると理解しやすくなります。
Q5. 業界の平均PERと大きく違う場合はどう見ればいい?
まずは「なぜ違うのか」を調べてみましょう。
たとえば、ある会社だけ売上が急に伸びている、または大きなトラブルをかかえているなど、特別な事情があるかもしれません。
PERが平均と大きくかけ離れているときは、理由をしっかりと調べてから判断するようにしてください。
まとめ
PER(株価収益率)は、「株価がその利益に対してどれくらい高いか」を表す大切な指標です。
株が高すぎるのか、それともまだ安いのかを見極めるためのヒントになります。ですが、PERだけを見て判断するのはとても危険です。
会社の業績、他の数字、同じ業界の会社との比較など、いろんな角度からバランスよく見ることが、投資で失敗しないためのコツになります。