株式投資を始める際に知っておくべき重要な指標の一つが、PER(株価収益率)です。企業の収益性を評価するための指標であり、株価が割高か割安かを判断する際に役立ちます。
この記事では、PER(株価収益率)が何を意味し、どのように計算され、どのように判断されるのかについて詳しく説明します。
初心者の方でも理解しやすいように、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。
PER(株価収益率)とは?
PER(株価収益率)とは、株価が一株当たり利益(EPS)に対してどれだけの倍率で取引されているかを示す指標です。
英語で「Price Earnings Ratio」の略で、日本語では「株価収益率」と呼ばれます。
投資家にとって、株式の割高・割安を判断する重要な要素となります。業種によって平均的なPERは異なりますので、比較や分析を通じて投資の判断を行います。
バリュー投資や成長株を見極めるのに重要な指標にもなります。
バリュー投資については、「バリュー投資の基本!割安株の見つけ方と失敗しない投資のコツ」からご覧ください。
成長株については、「有望な成長株を見極めるための7つのポイント!初心者でもできる銘柄選びのコツ」からご覧ください。
どこに記載してある?
最新のPERは、株の情報サイト(Yahoo!ファイナンスや株探)、証券会社サイト(松井証券やauカブコム証券)など、株関連のサイトならどこでも確認できます。
過去のPERデータは、株探サイトで入手できます。
ただし、過去の一覧と推移チャートは、株探プレミアムの申し込みが必要です。
株探の場合は、「ヒストリカルPER」という名称になります。PERの分析には非常に便利なので、ぜひお試しいただきたいです。
目安は?
一般的に、PERの目安は以下の通りです。
- 10倍以下:割安
- 10〜20倍:適正価格
- 20倍以上:割高
ただし、これはあくまで目安であり、個別の企業や業界の状況に応じて異なる判断が必要です。
PERが高い場合、株価が利益に対して割高とされることが多いです。しかし、高PERの企業は将来の成長が期待されている場合が多く、成長株に多く見られます。
PERが低い場合、一般的には株価が利益に対して割安とされることが多いです。ただし、低いPERが必ずしも良い投資先を意味するわけではなく、業績悪化の懸念がある場合もあります。
PER9倍だからといって、株価が上がるわけではないので、安易に買わないようにしてください。
PER(株価収益率)の計算方法
PERの計算は、株価を一株当たり利益(EPS)で割ることで簡単に行えます。
最新のPERは、株探やYahoo!ファイナンスなどで確認できますので、わざわざ計算する必要はありませんが、一応説明します。
基本的な計算式
PERは以下の式で計算されます。
例えば、ある企業の株価が1,000円で、一株当たり利益(EPS)が100円である場合、その企業のPERは10となります。
まず、株価と一株当たり利益(EPS)を知る必要があります。これらの情報は、財務諸表や株価情報サイトで確認することができます。
株探だと、修正1株益のところに記載しています。決算期の前に「予」と記載しているのが最新の1株益になります。この時の株価が3,000円だった場合は、PER11.3倍です。
一株当たり利益(EPS)は、純利益を発行済株式数で割ったものです。EPSは、企業が株主にどれだけの利益をもたらしているかを示す指標です。
EPSの計算方法は以下の通りです。
純利益は、総収益から全ての経費を差し引いた後の利益です。純利益は決算書に記載されています。
発行済株式数は、企業が市場に発行している全ての株式の数です。これも決算書や企業の公式発表で確認できます。
具体的な計算例
ある企業の株価が1000円である。その年間純利益が1億円であり、発行済株式数が100万株である例で説明します。
まず、EPSを計算します。
次に、PERを計算します。
この場合、PERは10となります。これは、現在の株価が一株当たり利益の10倍です。
PER(株価収益率)の判断方法
PERは、主に以下のような場面で判断されます。
- 過去のPERとの比較判断
- 同業他社との比較判断
- 成長と成熟企業の比較判断
- 利益が安定しているか判断
それぞれについて詳しく見てみましょう。
過去のPERとの比較判断
過去のPERと現在のPERを比較することで、株価が過去と比べて割安か割高かを判断できます。
例えば、過去3年間の平均PERが20倍で現在が15倍であれば、現在の株価は過去と比べて割安と判断され株価が上がるかもしれません。
逆に、現在のPERが15倍で過去3年間の平均が10倍であれば、現在の株価は過去と比べて割高と判断され株価が下がるかもしれません。
ただし、他の財務指標や市場動向と併せて総合的に判断することが重要です。
同業他社との比較判断
同じ業界内の企業同士のPERを比較することで、どの企業が相対的に割安か割高かを判断する材料になります。
例えば、同じ業種のA社が20倍、B社が15倍だった場合、B社が割安と判断され株価が上がる可能性があります。
成長期待や業績の安定性なども考慮することで、より精度の高い投資判断が可能になります。
成長と成熟企業の比較判断
成長企業の場合、将来的な利益成長が期待されるため、PERが高くなる傾向があります。逆に、成熟企業や業績が停滞している企業はPERが低くなることがあります。
例えば、50倍と高くても成長期待がある場合は、株価が上がる可能性があります。
- 成長性の高い業界(例えばITやバイオテクノロジー):一般的にPERが高い
- 成熟した業界(例えば製造業):一般的にPERが低い
利益が安定しているか判断
企業の利益が安定しているかどうかも考慮します。
利益が安定している企業は、高PERでも投資価値があると見なされることがあります。逆に、利益が不安定な企業は低PERでもリスクが高いと評価されることがあります。
利益は決算短信で確認しましょう。
PER(株価収益率)の注意点
PERを判断する際には、以下の点に注意する必要があります。
- 利益の一時的な変動
- 業種ごとの適正PER
- PER単独での判断
- 株式の流動性
それぞれについて詳しく見てみましょう。
利益の一時的な変動
企業の利益が一時的に増減する場合、PERはその影響を大きく受けます。
一時的な利益増加でPERが低く見える場合がありますが、これは持続可能な利益水準でない可能性があります。逆に、一時的な損失でPERが非常に高くなる場合もあります。
これを見極めるために、過去数年間のデータを参照することが重要です。
過去のPERデータは、株探サイトで入手できます。ただし、過去の一覧と推移チャートは、株探プレミアムの申し込みが必要です。
業種ごとの適正PER
業種ごとに適正なPERは違います。適正なPERを見極めるには、業種の特性や市場の環境を理解し、複数の視点から分析することが重要です。
成長産業や新興企業は将来の利益拡大を期待されるため、一般に高めのPERが適正とされます。
例えば、テクノロジーやバイオテクノロジーなどの分野では、高い技術革新と成長が見込まれるため、高PERが正当化されることがあります。
安定した収益を上げる公益事業や消費財企業などでは、低めのPERが適正とされる傾向があります。これは、市場が安定した利益を期待しているためです。
PER単独での判断
PER単独での判断は危険です。他の指標(PBR(株価純資産倍率)やROE(自己資本利益率)など)と併せて総合的に評価することが重要です。
複数の指標を組み合わせることで、真の価値をより正確に把握することができます。
株式の流動性
株式の流動性が低い場合、PERは実際の市場価値を正確に反映していない可能性があります。
流動性の低い株式は、取引が少ないために価格変動が大きくなりやすく、PERが不安定になることがあります。
PER(会)とPER(C)は何が違う?
PER(株価収益率)には、「PER(会)」と「PER(C)」の2種類があります。これらの違いを理解することで、より正確な投資判断が可能になります。
・PER(会)=過去の実績EPSに基づく株価収益率
・PER(C)=予測EPSに基づく株価収益率
投資判断には、PER(会)とPER(C)の双方を比較することで、現在の株価が割安か割高か、また成長性が評価されているかを総合的に把握することが重要です。
以下、それぞれの特徴と違いについて詳しく解説します。
1. PER(会)とは
PER(会)は、「会計上のPER」を指します。
通常、直近の決算に基づいた実績ベースの数値で計算されることが多いです。
PER(会)は、株価を過去の実績EPS(1株当たり利益)で割ったものです。
実際に確定している過去の業績を基にしているため、確実なデータに基づいています。ただし、株価は未来の成長を織り込むため、PER(会)だけで将来の成長性を判断するのは難しい点があります。
2. PER(C)とは
PER(C)は、「コンセンサスPER」または「予想PER」を指します。
この場合、証券アナリストなどが予測する今後1年間の利益をもとに計算されます。
株価を予測EPSで割ることで算出されます。
将来の業績予測に基づいているため、企業の成長期待や業界のトレンドを反映した数値となります。しかし、予測に基づくため、実際の業績が異なった場合には大幅に修正される可能性もあります。
PER(会)とPER(C)の違いと使い分け
PER(会)は確定した過去の実績を基にしているため、信頼性が高いと言えます。一方、PER(C)は予測値のため、外部環境や企業の経営状況が変化すれば見通しが変わるリスクがあります。
成長性を重視したい場合にはPER(C)を用いることで、将来の利益に対する株価水準を把握できます。逆に、過去の業績が安定している企業に投資したい場合にはPER(会)を参考にするとよいでしょう。
PER(株価収益率)のよくある質問
PERに関するよくある質問とその回答をまとめました。
Q1.業種ごとのPERの違いはある?
はい、業種によって平均的なPERは異なります。
例えば、安定した収益を上げる公益企業は低PERになることが多く、成長が期待されるIT企業は高PERになることが一般的です。
Q2.マイナスの場合はどう判断すればいい?
マイナスの場合、その企業が赤字であることを示しています。
EPSがマイナスになるとPERもマイナスになるため、この場合はPER以外の指標で評価を行う必要があります。
Q3.使い方のポイントは何ですか?
PERを使う際は、同業他社との比較、企業の過去PERとの比較、予想PERの活用などを行うことで、より精度の高い投資判断が可能になります。
また、PERだけに頼らず、他の指標や市場環境も考慮することが重要です。
Q4.どのくらいの頻度で確認すべき?
定期的に確認することが望ましいです。
特に四半期決算や業績予想が発表された時など、業績に大きな変化があった場合には確認することをお勧めします。決算短信と一緒に見ましょう。
Q5.業界平均と大きく異なる場合は?
業界平均と大きく異なる場合、その理由を調査することが重要です。
例えば、特定の事業が非常に好調である、または問題が発生しているなどの背景を理解することで、投資判断の精度を高めることができます。
まとめ
PER(株価収益率)は、企業の株価がその利益に対してどれだけ高いかを示す重要な指標です。
投資家にとっては、株価が割安か割高かを判断するための一つの目安となります。しかし、PERだけに依存せず、他の指標や業界特性も考慮して総合的に評価することが大切です。