株式市場にはさまざまな規模の企業が上場していますが、その中でも特に注目したいのが「マイクロキャップ」と呼ばれる小型株です。
この記事では、マイクロキャップとは何か、その特徴やメリット・リスク、そして投資を考えるときのポイントについて、分かりやすく解説いたします。
マイクロキャップとは?
マイクロキャップとは、時価総額がとても小さい企業のことを指します。
一般的には、時価総額が数十億円から数百億円ほどの企業がこれにあたります。
こうした企業は規模が小さいため、市場での売買が少なく、株を売りたいときや買いたいときに取引が成立しにくい(流動性が低い)ことが多いです。
上場先としては、東証グロース市場やJASDAQなど、成長を目指す企業が集まる市場に多く見られます。
また、マイクロキャップ企業は市場での知名度がまだ低いため、他の投資家が注目していない段階で、将来大きく成長する可能性のある株(成長株)を見つけるチャンスがあります。
その反面、業績が安定していなかったり、情報が少なかったりすることも多く、リスクも大きくなりやすいので注意が必要です。
時価総額について詳しく知りたい方は、下記の記事でご覧ください。
1. 他のカテゴリーとの違い
カテゴリー | 時価総額の目安 | 主な特徴 |
---|---|---|
ラージキャップ | 約5000億円以上 | 安定性が高い、配当利回りが魅力 |
ミッドキャップ | 約1000億円〜5000億円 | 成長性と安定性のバランスが良い |
スモールキャップ | 約500億円〜1000億円 | 成長余地が大きいがリスクも高い |
マイクロキャップ | 約500億円以下 | 高成長ポテンシャル、流動性リスク |
2. 各カテゴリーの参考銘柄
カテゴリー | 参考銘柄 |
---|---|
ラージキャップ | トヨタ自動車(7203)、ソニーグループ(6758)、三菱UFJ(8306) |
ミッドキャップ | ニチレイ(2871)、ライオン(4912)、ツムラ(4540) |
スモールキャップ | ワコム(6727)、グンゼ(3002)、ユナイテッドアローズ(7606) |
マイクロキャップ | 雪国まいたけ(1375)、チヨダ(8185)、古河電池(6937) |
現在の時価総額ランキングは、YAHOOファイナンスで見れます。
マイクロキャップ企業の3つの特徴
ここでは、マイクロキャップ企業の特徴について詳しく解説します。
それぞれについて詳しく見てみましょう。
1. 成長の可能性が大きい
まだ成長の途中にある場合が多く、これから大きく育つ力を秘めています。特に、新しいアイデアや技術をもとにした事業を行っている企業も多く、将来の飛躍が期待されます。
また、会社の規模が小さいため、経営判断が早く、市場の変化にもすぐに対応できます。
そのため、チャンスを逃さずに成長していく力が備わっているのです。
2. 情報が少ない
大企業に比べると世の中に出回っている情報がとても少ないことが特徴です。
財務状況や事業の見通しについて、細かいデータが手に入りにくい場合もあります。そのため、投資を考える際には、しっかりと時間をかけて調べることが大切です。
企業のビジネスの中身や、経営者の経歴、将来の計画などを、じっくり確認しましょう。
3. 株の売り買いが難しい
売りたい時にすぐ売れなかったり、買いたい時にすぐ買えなかったりすることがあります。これは、株を売ったり買ったりする人が少ないためです。
また、大きな売買が行われると、株価が一気に上下してしまうことも珍しくありません。そのため、売買をするときは、市場の様子をよく見ながら、慎重に進める必要があります。
マイクロキャップに投資するメリット
マイクロキャップ株は、うまく選べばとても大きな利益を得られる可能性があります。
ここでは、具体的なメリットについてご紹介いたします。
1. 大きな利益が狙える
成長が注目されたり、大手企業と手を組んだりすると、株価が数倍に跳ね上がることがあります。たとえば、画期的な技術を開発した会社が注目を集め、短期間で何倍にも成長することもあります。
2. 他の投資家より早く情報をつかめる
マイクロキャップ企業は、大きな投資家(銀行や年金など)からあまり注目されていません。
そのため、個人投資家でも自分で調べることで、まだ世の中に知られていないチャンスを見つけることができます。
企業を訪問したり、製品やサービスを実際に見たりして、他の人より早く良い情報を手に入れましょう。
3. 未来を切り開く会社に投資できる
小さな会社だからこそ、新しいビジネスや技術に挑戦することができます。大きな会社にはできないスピードで変化に対応し、未来の大きな市場を狙っています。
このような会社に早くから投資できることも、大きな魅力です。
4. 買収されることで株価が跳ね上がる可能性
小さな会社は、大企業に買われる(M&A)ことがあります。
買収されるときには、株価が通常より高く買われるため、持っていた株が大きく値上がりすることが期待できます。特に、新しい技術を持っている会社や、特定の地域で強みを持つ会社は、買収対象になりやすいです。
5. 投資のバランスを取れる
大きな企業の株とは動き方が違うため、投資のリスクを分散させることができます。
全体の景気よりも、会社そのものの成長に株価が左右されやすいので、ポートフォリオに入れることで、安定感を高めることができます。
ポートフォリオの作り方は、下記の記事からご覧ください。
マイクロキャップ投資に潜むリスク
成長の可能性が大きいマイクロキャップ株ですが、当然リスクもあります。
ここでは、特に注意したいポイントをお伝えいたします。
1. 売りたい時に売れないリスク
取引量が少ないため、売りたい時にすぐ売れない場合があります。
急いで売ろうとすると、思ったより安い値段でしか売れないこともあります。このリスクを減らすためには、一度に大量に売らず、少しずつ売る工夫が必要です。
2. 値動きが激しいリスク
マイクロキャップ株は、ちょっとしたニュースでも大きく値段が動きます。短期間で株価が急上昇したり、急落したりすることがよくあります。
「この値段まで下がったら売る」といったルールを決めておくと、冷静に対応できます。
3. 情報が足りないリスク
大企業に比べ、マイクロキャップ企業は情報を出している量が少ない傾向にあります。決算発表が遅れたり、事業内容がはっきりしない場合もあります。
投資をする前には、会社のホームページや過去の発表資料をしっかり調べることが大切です。
4. 倒産するリスク
小さな会社は、資金繰りが苦しくなったり、景気が悪化したときに倒産してしまうことがあります。財務状況が健全かどうかを確認するために、自己資本比率や手元資金の量をチェックしておきましょう。
自己資本比率とキャッシュフローについては、下記の記事からご覧ください。
5. 景気や政策の影響を受けやすいリスク
景気が悪くなったり、政策の変更があったりすると、大きな影響を受けやすいです。例えば、金利が上がると資金調達が難しくなり、経営が厳しくなることもあります。
業界を分散させ、特定の分野に偏りすぎないように投資することが大切です。
6. 株価を操作されるリスク
取引量が少ないため、一部の悪意ある投資家が株価を不自然に動かすケースもあります。
SNSや掲示板で過剰に注目されると、一時的に株価が大きく動くこともあるので注意が必要です。情報をうのみにせず、自分で冷静に判断するようにしましょう。
マイクロキャップ株のよくある質問
Q1. 選ぶときに大切なポイントは何ですか?
マイクロキャップ株を選ぶ際には、まず企業の財務状況をしっかり確認しましょう。
そのうえで、ビジネスモデルや今後の成長の見込み、市場におけるライバルの強さ、経営陣の信頼性なども丁寧に調べることが必要です。
特に「きちんと利益を出せているか」と「手元にしっかりお金(キャッシュフロー)があるか」は、とても大切な確認ポイントになります。
これらを総合的に見て、安心して投資できる企業かどうか判断してください。
Q2. 短期と長期、どちらの投資に向いていますか?
マイクロキャップ株は、企業に新しいニュースが出たときなどに大きく値段が動くことが多いため、短い期間で売り買いする「短期投資」でも利益を狙いやすい特長があります。
一方で、これから伸びる業界や、特別な技術を持っている企業に賭ける場合には、長い期間じっくりと持ち続ける「長期投資」も効果的です。
どちらが良いかは、銘柄やご自身の投資スタイルによって使い分けていきましょう。
Q3. 流動性リスクはどうすればいいですか?
マイクロキャップ株は売り買いできる量が少ないため、すぐに売れなかったり、思った値段で買えなかったりすることがあります。
このリスクを減らすためには、マイクロキャップ株ばかりに偏らず、大型株など流動性が高い銘柄も組み合わせることが大切です。
また、「いつ、どのくらい売るか」という出口戦略をあらかじめ考えておき、必要に応じて少しずつ売却するなど、柔軟に対応することをおすすめします。
Q4. 株価が大きく動きやすいと聞きましたが、対策はありますか?
はい、対策はしっかり取ることができます。
まず、買ったときに「ここまで下がったら売る」という損切りのルールをきちんと決めておくことが大切です。
また、マイクロキャップ株だけに頼らず、値動きの穏やかな大型株や、ほかの資産と組み合わせて持つことで、全体のリスクを抑えることができます。
Q5. どの業界が将来性がありますか?
現在、注目されている業界はたくさんあります。
例えば、人工知能(AI)、モノ同士がつながる技術(IoT)、金融と技術を組み合わせた新しいサービス、バイオテクノロジー、医療機器の開発、自然エネルギーに関わる企業などが有望です。
これらの分野はこれからも成長が見込まれており、マイクロキャップ企業でも大きなチャンスが広がっています。ただし、業界のトレンドは移り変わるため、常に新しい情報をチェックすることが大切です。
まとめ
マイクロキャップ企業への投資は、大きなリターンが期待できる一方で、それに見合ったリスクもあります。
成功のためには、あせらず丁寧に情報を集め、事前にリスクをしっかり理解したうえで投資を進めることが何より大切です。
特に、企業の収益力やお金の流れを重視して調査し、納得してから投資を行いましょう。
リスクを恐れすぎず、しかし油断せずに、着実に資産を増やしていけるよう、日々の勉強と準備を続けてまいりましょう。