株式投資にはさまざまな戦略がありますが、その中でも「恩株」は特にリスク管理に優れた方法として知られています。
恩株とは、投資した元本を回収した後に残る株のことで、一度元本を回収してしまえば、その後の値動きに左右されにくくなるのが特徴です。
暴落が起きても大きな損失を被る心配がなく、長期的に配当や優待を受け取ることもできます。
この記事では、恩株の仕組みやメリット・デメリット、具体的な作り方を詳しく解説します。
恩株とは?
恩株(おんかぶ)とは、株を購入した後に利益が出た分を活用し、元本部分を回収した状態の株のことを指します。
簡単に言うと、「タダで持ち続けられる株」のことです。
例えば、100株を1,000円で購入した場合、株価が2,000円に上昇したタイミングで半分の50株を売却すれば、元本(100,000円)は回収できます。
このとき、手元に残った50株は「購入時の資金がかかっていない株=恩株」となります。
恩株の特徴
- リスクが低い:元本を回収しているため、仮に株価が下落しても損をしない。
- 長期保有に向いている:短期的な値動きを気にせず、配当や株主優待を受け取れる。
- 心理的負担が少ない:投資資金が戻っているので、焦って売る必要がない。
特に長期投資を考える人にとって魅力的な手法といえます。
恩株の4つのメリット
1. 元本リスクがなくなる
恩株になると、すでに投資したお金を回収できているため、仮に株価が下がっても損失を出すことがありません。これにより、精神的な負担が軽減され、安心して株を持ち続けられます。
通常の株式投資では、株価の上下に一喜一憂しやすいものです。しかし、恩株は元本を回収しているため、値下がりの恐怖に悩まされることがなくなります。
例えば、100万円で購入した株が200万円になった場合、100万円分を売却して元本を回収し、残りの株をそのまま保有すれば、それが恩株になります。

2. 長期保有による配当や株主優待が受けられる
恩株を持ち続けることで、配当金や株主優待を長期間受けることができます。元本が回収できているため、追加のリスクを負うことなくお金が増えていく仕組みを作れます。
配当金は、企業が利益の一部を株主に分配するものです。株主優待は、企業が提供する特典で、食品や割引券などがもらえます。
恩株であれば、これらのメリットをリスクなしで享受できるのです。
下の表は、持ち続けた場合の配当金と株主優待の例です。
企業名 | 1株あたりの配当金 | 株主優待内容 |
A社 | 100円 | 自社製品3,000円分 |
B社 | 50円 | 買い物割引券 |
C社 | 30円 | 食品詰め合わせ |
恩株としてこれらを持ち続けると、毎年お金や商品がもらえるという状態になります。
3. 再投資でさらなる利益を狙える
元本を回収した後の資金を使って、新たな有望な銘柄に投資することで、さらなる資産の増加を目指せます。
投資の基本は「増えた資金を効率的に運用すること」です。
恩株が生まれたら、その元本を新しい投資先に回すことで、資産をさらに増やすチャンスが広がります。
例えば、100万円で購入した株が200万円になったとします。ここで100万円分を売却し、その資金を別の成長株に投資すれば、資産の増加スピードを加速できます。
戦略 | 内容 |
Aパターン | 恩株を持ち続け、配当や優待を受け取る |
Bパターン | 元本を回収し、新たな銘柄に投資する |
Cパターン | 一部を売却し、リスク分散しながら運用する |
このように活用することで、柔軟な資産運用が可能になります。
4. 株価上昇時の恩恵を受け続けられる
恩株は、仮に株価がさらに上昇した場合、その恩恵をリスクなしで享受できます。特に成長企業の株を持っていると、大きな利益を生む可能性があります。
成長株は、時間とともに株価が上昇する傾向があります。恩株であれば、利益が増え続けても売る必要がなく、さらに大きなリターンを得られるのです。
例えば、100万円で買った株が200万円になり、100万円分を売却して恩株化。その後、株価が3倍に上昇すれば、最終的に300万円の利益を得られます。
状況 | 投資額 | 売却後の残り株の価値 | 最終利益 |
購入時 | 100万円 | ー | ー |
株価2倍 | 200万円 | 100万円分売却 | 100万円回収 |
株価3倍 | 300万円 | ー | 300万円の利益 |
このように持ち続けることで、株価の成長を最大限活用できます。
恩株の4つのデメリット
1. 過度な安心感による判断ミス
恩株は元本を回収しているため、「もう損をすることはない」と思いやすくなります。しかし、その安心感が適切な売買判断を妨げることがあるため注意が必要です。
本来、株を持ち続けるかどうかは「今後の成長が期待できるか」で判断するべきです。
しかし、「リスクゼロだから」と安易に保有し続けてしまい、最適な売却タイミングを逃してしまうことがあります。
例えば、ある企業の株が100万円から200万円に上がり、100万円分を売却して恩株にしたとします。
その後、業績が悪化し株価が下がり続けても、「元本は回収済みだから」と放置してしまうと、最終的には無価値になってしまうかもしれません。
状況 | 株価 | 判断 | 結果 |
購入時 | 100万円 | 買う | ー |
株価2倍 | 200万円 | 100万円売却 | 恩株化 |
株価半減 | 50万円 | 保有継続(判断ミス) | 損失拡大 |
2. 他の投資機会を逃す
恩株にこだわりすぎると、新たな投資チャンスを逃してしまう可能性があります。資産を有効に活用するためには、定期的にポートフォリオを見直すことが重要です。
株式市場では、成長が鈍化する企業もあれば、急成長する企業もあります。恩株を長期間持ち続けていると、より有望な銘柄への乗り換えのタイミングを逃してしまうことがあります。
例えば、過去に成長していた企業の株を恩株として持ち続けていたものの、最近は競争力が低下し、成長が鈍化してしまったとします。
その間に、新しい業界の企業が急成長していた場合、資金をそちらに回していた方が利益を得られた可能性があります。
状況 | A社の株価 | B社の株価(成長株) | 判断 | 結果 |
初期投資 | 100万円 | 100万円 | A社を恩株化 | ー |
5年後 | 110万円 | 300万円 | A社を持ち続けB社に投資せず | 機会損失 |
3. 配当や優待の改悪リスク
恩株を長期保有する理由の一つに「配当や株主優待の継続的な受け取り」があります。しかし、企業の方針変更によって配当が減ったり、優待が廃止されたりするリスクがあるため注意が必要です。
業績が悪化すると、配当金が減額されたり、場合によっては無配になることもあります。また、株主優待は経営状況によって変更されることがあり、長期的に維持される保証はありません。
例えば、過去に高配当を続けていた企業が業績悪化により配当を大幅に削減したケースがあります。また、人気のあった株主優待が突然廃止された例もあります。
企業名 | 配当金(変更前) | 配当金(変更後) | 優待内容の変更 |
X社 | 50円/株 | 10円/株 | 割引券 → 廃止 |
Y社 | 100円/株 | 50円/株 | 食品 → 内容縮小 |
4. 企業の倒産リスク
恩株とはいえ、企業が倒産してしまえば、その株の価値はゼロになってしまいます。元本を回収しているからといって、無価値になるリスクを軽視するのは危険です。
株式市場では、かつて成長していた企業が突然経営不振に陥り、最終的に倒産してしまうケースが少なくありません。
安心しきって放置していると、全ての価値を失ってしまいます。
過去には、有名企業でも経営不振から上場廃止や倒産に至った例があります。その際、恩株を持ち続けていた株主は、最終的に何の価値も得られなくなりました。
企業名 | 過去の株価 | 現在の株価 | 状況 |
Z社 | 3,000円 | 0円 | 倒産 |
W社 | 5,000円 | 50円 | 上場廃止 |
恩株の作り方
1. 初期投資額を決める(リスク管理が重要)
株式投資では、最初にどれだけの資金を投じるかが非常に重要です。
無理に大きな資金を使うと、相場の変動で焦りやすくなり、適切な判断ができなくなることがあります。そのため、以下の3つのポイントを意識して投資額を決めましょう。
- 余裕資金の範囲内で投資する(生活費を削らない)
- 分散投資を心がける(1つの銘柄に全額を投入しない)
- 小さな金額から始める(特に初心者は1回の投資額を抑える)
例えば、資金が30万円ある場合、1つの銘柄に全額を投じるのではなく、3~5銘柄に分けて投資するのが理想的です。
2. 株価が上がる銘柄を選ぶ(成長性を見極める)
恩株にするには、購入後に株価が上がる銘柄を選ぶことが必須です。では、どのような企業を選べばよいのでしょうか?
以下の3つのポイントを押さえると、株価が上昇しやすい銘柄を見つけやすくなります。
業績が安定して伸びている企業を選ぶ
売上や利益が年々増加しているかを確認し、赤字続きの企業は避ける。
将来性のある業界・企業を選ぶ
新しい技術やサービスを提供している企業を選ぶ。
割安な株を見つける
株価が企業の実力に対して低すぎないかを確認する。
3. 株価が上昇したら元本を回収する(売却のタイミング)
株を購入した後、適切なタイミングで一部を売却し、元本を回収することが大切です。では、どのタイミングで売るのがよいのでしょうか?
以下のような基準を設けると、迷わずに行動できます。
- 株価が購入時の1.5倍~2倍になったら、半分を売却。
- 業績や市場の状況を見て、適切な利益確定をする。
- 急激な株価上昇があった場合は、一部を売却して利益を確定。
例えば、100株を1,000円で購入し、株価が2,000円になったら50株を売ることで、元本の100,000円を回収できます。
これにより、残りの50株は恩株として持ち続けることが可能になります。
4. 長期的に運用する(配当や株主優待を活用)
恩株になった後は、長期的に持ち続けることで配当や株主優待などのメリットを受けられることがあります。
- 配当金を受け取る → 企業が利益を出すと、株主に配当金が支払われる。
- 株主優待を活用する → 企業によっては、商品券や割引券がもらえる。
- さらに株価が上がれば、大きな利益につながる。
例えば、恩株として持ち続けた株が10年後に2倍、3倍と成長することも珍しくありません。
特に、配当が出る企業の株を持っていると、売らなくても毎年お金がもらえるため、資産形成に役立ちます。
恩株を保有する際の注意点
適切な管理をしないと投資のチャンスを逃したり、逆に資産が目減りすることもあります。
そこで、恩株を保有する際の注意点について詳しく解説します。
1. 恩株だからといって油断しないこと
恩株は「損をしない」と思われがちですが、油断すると大きな機会損失を招くことがあります。
なぜなら、株価が停滞したり、業績が悪化したりすると、本来売るべきタイミングを逃してしまうことがあるからです。
具体的なリスク
成長性のない企業に資金を固定してしまう
株価が上がらない銘柄を長期間保有すると、他の有望な投資機会を逃します。
配当や優待の減少に気づかない
企業業績が悪化すると、配当や株主優待が改悪される可能性があります。
市場全体の変化を見落とす
経済状況や業界動向の変化によって、価値が低下することもあります。
2. 過度な執着を避けること
「せっかく恩株になったから手放したくない」と思う気持ちは理解できますが、感情に流されると冷静な判断ができなくなります。株式投資では、冷静な判断が重要です。
執着することで起こる問題
売るべきタイミングを逃す
株価が下がり続けて利益が減少する。
資金が固定される
他の有望な銘柄に投資できなくなる。
市企業リスクを見落とす
経営悪化や業績悪化のサインを無視してしまう。
3. 適切な売却ルールを決めること
恩株だからといって「ずっと保有し続ける」と決めるのは得策ではありません。
利益確定のタイミングや損切りのルールを事前に決めておくことで、合理的な判断がしやすくなります。
具体的な売却ルールの例
株価が○%上がったら一部売却
例えば「株価が30%上昇したら半分売る」など、利益確定の基準を決める。
業績悪化の兆しが見えたら売却
売上や利益が3期連続で減少している場合は見切りをつける。
市場環境の変化を考慮する
業界全体が低迷している場合は、早めに資金を引き上げる。
4. 投資の目的を明確にすること
恩株を持ち続けることが目的になってしまうと、投資の本来の目的を見失います。
最初に「なぜこの銘柄に投資したのか」「今後どうしたいのか」を明確にすることが大切です。
目的を明確にするためのチェックポイント
値上がり益を狙うのか?
まだ成長余地があるなら、売らずに持ち続けるのも選択肢。
配当や優待を重視するのか?
配当が安定しているなら、長期保有の価値がある。
資産を増やすための手段として適切か?
他に魅力的な銘柄があるなら、資金を移動するのも賢明。
恩株の成功例と失敗例
恩株を成功させるためには、実際の事例を知ることが重要です。
成功事例からは効果的な手法を学び、失敗例からは注意すべきポイントを把握できます。
ここでは、それぞれのパターンを解説します。
【成功例】成長株で恩株を作り、長期的な利益を得たケース
Aさんは、10年前に1株1,000円の成長企業の株を100株(合計10万円分)購入しました。
その企業は業績が好調で、株価は5,000円まで上昇しました。そこで、Aさんは40株を売却し、元本10万円を回収。残りの60株を恩株として長期保有しました。
成功のポイント
- 成長性のある企業を選んだ:業績が安定して伸びる企業を見極めた。
- 適切な売却タイミング:株価が十分に上昇した時点で元本を回収した。
- 恩株を長期運用:その後も企業の成長に応じて株価が上昇し、配当も受け続けている。
このように、成長が期待できる企業を選び、適切なタイミングで売却することが成功につながります。
【失敗例】株価が上がる前に売却しすぎたケース
Bさんは、1株2,000円の株を50株(合計10万円分)購入しました。
その後、株価が3,000円になった時点で、元本回収のために30株を売却しました。しかし、その後その企業の業績が大きく伸び、株価は1万円まで上昇しました。
残りの恩株20株は持っていたものの、早めに売りすぎたため、最大の利益を逃してしまいました。
成功のポイント
- 売却を急ぎすぎた:短期的な値上がりで売ってしまい、大きな成長を逃した。
- 企業の成長を見誤った:長期的な業績の伸びを考慮しなかった。
- 慎重になりすぎた:一部だけ売却して恩株化するより、長く持ち続ける選択もあった。
このように、「どのタイミングで売却するか」が非常に重要です。
恩株に向いている投資スタイル
1. 成長株投資(グロース株を狙う方法)
成長株投資は、企業の成長性を重視して将来の値上がりを狙う投資方法です。
特に、売上や利益が右肩上がりの企業に投資することで、株価の上昇とともに恩株を作りやすくなります。
成功するためのポイント
- 業績の伸びを確認する(決算発表をチェック)
- 過去の株価推移を分析する(右肩上がりかどうか)
- 市場全体の成長性も考慮する(流行りの業界か)
成長株投資では「安い時に買って、高くなったら元本を回収する」ことが重要です。
成長株については記事で紹介していますので、参考にしてみてください。
2. 高配当株投資(配当再投資で恩株を増やす)
高配当株投資は、株を持っているだけで毎年配当がもらえるのが特徴です。配当を再投資すれば、資産が増えやすく、恩株化のスピードも加速します。
成功するためのポイント
- 配当が安定しているか(過去10年間の推移を見る)
- 財務状況が健全か(自己資本比率が高い企業が安心)
- 業績が悪化していないか(利益が減ると配当も減る)
高配当株投資では「減配のリスクを避けること」が重要です。
配当については記事で紹介していますので、参考にしてみてください。
3. バリュー投資(割安な優良株を仕込む)
バリュー投資とは、市場で過小評価されている割安な株を買い、適正価格まで値上がりするのを待つ手法です。適切に選べば、大きな値上がり益を得て恩株化が狙えます。
成功するためのポイント
- なぜ割安なのかを調べる(一時的な不人気か、業績が悪化しているのか)
- 財務が安定しているか確認する(借金が少なく、自己資本比率が高い企業が安心)
- 割安のまま放置されるリスクを考える(成長性がないと株価が上がらない)
バリュー株を適切に選び、適正価格に戻ったタイミングで元本を回収すれば、長期保有しやすくなります。
バリュー投資については記事で紹介していますので、参考にしてみてください。
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【初心者向け】バリュー投資の基本!割安株の見つけ方と失敗しない投資のコツ
4. 積立投資(時間をかけて恩株を作る)
積立投資は、一定額を定期的に投資し、長期間続けることで資産を増やしていく方法です。市場の上下に惑わされず、コツコツ恩株を作るのに適しています。
成功するためのポイント
- 短期間で結果を求めない(10年以上の運用が基本)
- コツコツ続ける(積立額を途中で減らさない)
- 成長性のある銘柄を選ぶ(市場全体が成長する分野を狙う)
株価が上がったときに元本を回収しやすく、恩株を確保しやすくなります。
まとめ
恩株をうまく活用すれば、元本を回収した後も安心して株を持ち続けることができます。
暴落が起きても大きな損失を避けられるため、落ち着いて投資を続けられるのが大きな強みです。しかし、油断すると適切な売却の機会を逃したり、他の投資チャンスを見過ごしたりすることもあります。
大切なのは、利益を確保しつつ、冷静に運用を続けることです。